感染症や自然災害に強い社会のために法整備を…医師の国会議員が語る「コロナ禍の現実」

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災害対策基本法にもとづく瓦礫撤去が「財産権」に阻まれた現実

 フォーラムは設立から3ヶ月後の令和3年9月、「医療分野を中心に現行法の運用により可能と考えられる事前及び緊急時の対策における改善策」と「現行法の枠を超えた『緊急時』にふさわしい法制度の整備」を求める第1次の提言を行った。ここでは、国家安全保障としての感染症対策の戦略構築、「平時」から「緊急時」への円滑な転換を図るための関係法令の整備などが提案された。

 今年4月26日には、衆院第一議員会館で開いた集会で「『平時』から『緊急時』対応への円滑な移行と緊急財政支援を」をテーマとする第2次提言を行った。集会には代理出席を含む約50人の与野党国会議員も出席、その場で自民、立憲民主、公明、維新、国民民主の与野党の政調会長(公明は代理)に提言書が手渡された。後日、官邸にも届けられた。

 提言では、阪神・淡路大震災や東日本大震災での「災害対策基本法(災対法)」に関して、(1)「災害緊急事態の布告(105条)」が発令されず灯油やガソリン等の買い占めが起きた (2)応急措置の妨げとなる瓦礫や倒壊家屋などの除去に関する規定(64条2項)がありながら「財産権」と衝突した (3)原発被災地への燃料等の輸送のための「輸送関係業者への従事命令(71条)」を発令できなかったとの具体的な問題点を挙げた。

提言には「緊急事態宣言発令」を憲法に規定する必要性も

 今回のコロナ感染症については、(1)「新型インフルエンザ等対策特別措置法」で定める「医薬品や医療機器の緊急生産や供給の措置(47条)」を命令として出せなかった (2)感染症法改正による「病床確保の要請や勧告(16条の2)」に強制力がなく医療従事者の確保を働きかける組織もなかった (3)臨時病院の確保等が、医療法や消防法などの他の法規制で迅速に対応できなかった (4)介護・障害者・子育てなどの福祉現場での感染予防や支援策の脆弱性が明らかになったことを例示した。

 また、感染症や自然災害時の社会経済活動の回復や維持にも言及。自治体や民間事業者への資金給付の迅速化のための法整備や(行政府の)事務処理のデジタル化促進、独自のBCP経済安全保障の観点からの「医薬品や医療資機材の国内生産と備蓄体制の整備」などを求めた。

 さらに、内閣による「緊急事態宣言」の発令を憲法に規定し、(1)緊急時に関連する関係法令について行政担当者が「違憲の疑い」に躊躇せずに緊急措置を行えるようにする (2)緊急事態宣言下で国会による予算措置の議決を待つ時間がない場合、内閣が「緊急財政支出」を行って事後に国会が承認するなどの法整備も加えた。

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