世界最高齢119歳「田中カ子」さん逝去 45歳ですい臓、103歳で大腸がん克服…長寿の秘訣を語っていた

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炭酸飲料が好き

 佐藤氏によれば、

「サイダーなどの炭酸飲料を飲むのが好きで、最近のお気に入りはオロナミンC。栄養バランスも考えて、昼食後に1日1本しか供さないようにしているんですが、カ子さんは『もっと飲みたい』とよく言います。それで、オロナミンCの瓶に他の飲料を入れてみると『これは違う』としっかり指摘されてしまいます」

 この日は三ツ矢サイダーが用意され、コップに注がれてシュワシュワと音が鳴り炭酸飲料だと分かると、手を叩いて喜ぶ。本誌記者と乾杯したのだが、その途中でもカ子さんは、「なんか食べたい」と言い出して、スナック菓子のうまい棒を貰っていた。袋を器用に剥いて頬張るが、朝昼晩の三食におやつも配るホームで、さらに食べ物を欲する入居者はカ子さんだけらしい。

 炭酸水は血管を拡張し、心肺機能が強化され食欲増進につながる効能があるとされるし、その旺盛な食欲も長寿の秘訣に違いない。

 加えて食器が下げられると、カ子さんは悲しそうな顔をしてこう言った。

「私、食べていない」

 困惑した職員に“もう食べましたよ”と諭されても、首を横に振って食べていないと繰り返すのだ。

 ある入居者曰く、

「カ子さんはね、本当に忘れてしまうのか、食べてないと言う時があるの」

 これもまた、もの忘れを演じる彼女なりのユーモアなのでは……。

 実際のところ、彼女の頭はしっかりしていて認知症などの兆候は見られない。

 先の廣田氏が言うには、

「毎朝オセロをやるのが日課で、その強さは誰もが認めるところ。入所当時は私が本気で挑んでも勝てず、どの職員も太刀打ちできなかったのでは」

 往時に比べ多少の衰えが見られるそうだが、ひ孫ほど離れた20代前半の本誌記者が挑んでみた。敢えて明かせば筑波大附属駒場高、東大卒の若者が戦った結果は、4枚差で彼女の勝ち。

 そこに置けば有利になる四隅の部分はしっかり狙ってくるし、相手がひっくり返せるのを忘れたところがあれば指摘する余裕をみせる。そんなカ子さんの頭の健康を支えているのは、週に1回の「脳トレ」だった。

 この施設では、入居者の年齢や健康状態に合わせ学習プリントを配布している。

 たとえば、慣用句の穴埋めや漢字の書き取り、計算問題に取り組むのだが、カ子さんは先生からプリントを受け取ると、鉛筆を握りしっかり今日の日付を8月16日と書き、自分の名前も漢字で記した。この日は、4+4や7-1などの1桁同士の足し算と引き算のプリント1枚と、1桁の掛け算のプリント4枚、さらに2桁と1桁の足し算のプリント1枚の計6枚が配られた。数字を書くスピードはゆっくりだが、手で数えているような様子もなく、頭の中でしっかりと集中して計算している様子が見てとれる。30分ですべてに解答したが、どのプリントも全問正解! 100点満点だ。

 前出の佐藤氏は、

「勉強するのも好きで、未だに好奇心旺盛なところが長寿に繋がっていると思います。自分は丁稚奉公をして勉強ができなかったから、今できるのが楽しいと仰います。脳トレの時間が本当に楽しみだそうで、カ子さんはお餅を売る店を営んでいたので計算は得意ですね」

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