パートさんの言葉が新入社員にやる気を出させる 専門家が危惧する「テレワークの弱点」

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もっと同期と交流したい

 今年も新入社員が初々しい面持ちで職場にやってくる季節になった。ここ2年は、新型コロナの影響で新人研修をテレワークに切り替えるなどの会社も多くみられる。満員電車での通勤や深夜残業が日常化している企業では、テレワークになったことを素直に喜んだ人も多かったことだろう。

 一方で、パソコンなど端末を前に、戸惑ったり、「顔を合わせないと調子が出ない」などとぼやいたりしている中高年社員もいるだろう。

 では、本来、もっともITに親和性が高い「新人」たちがテレワークを歓迎しているかといえば、実はそうでもないようだ。

 テレワークを経験した2020年4月入社者と、2019年入社者とを比較した調査(リクルート マネジメント ソリューションズ「新卒入社1年目オンボーディング実態調査」2021年6月にインターネットで実施)によると、入社1年目に「もっとあったらよかったもの(不足)」として2020年入社者があげたもののトップが「同期との交流」(40.3%)であり、2019年入社者の値(25.9%)を大きく上回っていた。テレワークが中心となれば、当然、対面で雑談することや、仕事の合間や帰りにちょっとそのへんで食事でも、といった機会が減る。そのあたりを不足に感じるのは当然だろう。

 組織論、人事管理論を専門にしている同志社大学政策学部教授・太田肇氏はこのような状況に置かれる新入社員たちの今後が心配だ、と語る。太田氏は新著『日本人の承認欲求―テレワークがさらした深層―』を上梓したばかりである。

「かつては新入社員どうしが夕方に連れだって帰宅したり、カフェでくつろいだりする光景をよく目にしたものです。同期生どうしで会話に花を咲かせて、職場の緊張をほぐしていたのでしょう。

 彼らはたとえ口に出さなくても互いに仲間として認め合っていて、だからこそ連れだって行動するし、安心して本音も漏らします。他愛のない雑談のなかから、たいへんなのは自分だけではないことを理解し、上司にはどう振る舞えばよいのかといった知恵を身に付けていくのです。

 こうした機会が減ることは、新人の精神にも成長にも良いことではありません」

パートさんが新人に与える好影響

 新人に影響を与えるのはもちろん同期生たちだけではない。太田氏は、かつて複数の会社の社長から、「職場にパートタイマーやアルバイトの人がいると新人が辞めない」という話を聞いたことがあるという。

「社長さんたちの話や、実際の現場を観察することでわかった理由は次のようなことでした。

 未熟な新人にとって、仕事で他人から頼られたり、感謝されたりする機会は乏しい。ところが職場にパートやアルバイトなど非正規のスタッフがいると、新人も比較的対等に話せる。新人といえどもパートやアルバイトに指示する立場に立たされる場合もあるでしょう。すると相手から頼りにされ、感謝される場面も出てきます。

 相手から『あなたは若いのによく気が付くね』などといった言葉が返ってくれば嬉しいものです。ささいな承認であっても、不安がいっぱいの新人にとってはそれが貴重なのです」(同)

 幸いなことに、まだ新入社員の離職率が上がったという傾向はない。ただし、心配な兆候はすでにある。全国大学生活協同組合連合会が2021年7月に全国の学生(1年生~4年生の合計7637人)に対して行った調査では、コロナ禍の最中に新入生だった2年生に深刻なダメージが残っていることが浮き彫りになった。「意欲がわかず、無気力に感じる」「気分の落ち込み」「友人とつながれていない孤独感・不安」「生きていることが嫌だと感じる」「自分の居場所がないと感じた」などの項目で、大学2年生の値が最も高いのである。

「コロナ禍が2年目に入った2021年の新入生には、大学も社会もそれなりの対策をとるようになったのですが、2020年の新入生は新たな環境に適応する大事な時期に彼らを受け入れる体制が整っていませんでした。その影響が大学生活2年目を迎えた時期にも尾を引いているのではないでしょうか。

 人生においては節目、節目の時期に必要な承認があります。たとえば乳幼児の時期に親から十分な愛情と無条件の承認を受けないと、その後の人生に影響が残るといわれます。入社時に十分な承認を受けられなかった社員たちにも、学生たちと同じようなダメージが残るとしたら当人にとっても企業にとっても重大な問題です」(同)

 対面が減った分だけパワハラも減る、なんて単純な話ではないようなのだ。

デイリー新潮編集部