茂木幹事長VS高市政調会長 不仲の全真相 自民党幹部「もはや子どもの喧嘩状態」

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開いた安倍元首相との距離

 高市氏がここまで厳しい状況に置かれた要因の一つには、総裁選で後見人的存在だった安倍晋三元首相と距離が離れたことがあります。高市氏は安倍氏が派閥会長になった折には安倍派に入り、安倍派を基盤に次期総裁を目指すつもりでした。しかし安倍派内には高市アレルギーが強く、強引に高市氏を入会させれば安倍氏の立場がなくなります。安倍氏は周辺にこう語っています。

「もともと総裁候補としては派閥に入れないと伝えてあったから。入れてくれないと言われても困るよ。高市さんの問題は彼女の性格の問題だね」

 安倍氏は周囲に公然と不満を漏らす高市氏に手を焼くようになっていきました。自民党幹部はこう語ります。

「安倍さんの後ろ盾がない高市さんでは、もはや党四役に入れておく意味がない」

 自民党幹部の間では早くも後任の政調会長に、安倍派の西村康稔前経済再生担当相の名前などが浮上しています。

茂木幹事長への不安

 しかし、一方の茂木幹事長の立場も盤石ではありません。「白紙」となった5000円の給付金について茂木氏は岸田首相、麻生副総裁とは擦り合わせていたものの、自分より下にはほとんど根回ししていませんでした。そのため自民党内からは不満が噴出。形勢が悪くなるにつれて茂木氏は苛立ちを強め、自民党職員や記者にも厳しく当たる様子が目撃されるようになります。党職員は語ります。

「茂木さんはかねてから人柄の問題を指摘されてだいぶ抑えてきたけれど、ここに来て爆発している」

 また、公明党や参議院との関係の悪さも幹事長としての不安要素として指摘されます。7月に迫った参院選で自民党執行部は、国民民主党の現職議員がいる山形では公認候補の擁立を見送る方針ですが、参院からの反発は想定以上に強く、無理に押し切ると禍根を残す可能性も出てきています。茂木氏は岸田首相に頼られる存在であることは間違いありませんが、自民党内には茂木幹事長を不安視する声も根強くあります。

混沌とする次のリーダー選び

 政党は常に次のリーダーを育て、ベンチに座らせておく義務があります。自民党の総裁候補として名前が挙がる麻生派の河野太郎広報本部長、岸田派の林芳正外務大臣は二人とも「宏池会系」。岸田首相の対抗馬と考えると、茂木幹事長や高市政調会長はいいポジションにいるのです。しかし、2人の関係が決定的に悪化している現状はリーダーとしての資質に疑問符を投げかけています。執行部の中で浮いてしまった高市氏はもとより、茂木氏についても「今回、下をうまく使えないことが露呈してしまった。果たして宰相の器なのか」という声が、茂木派内部からも聞こえます。

 既存の価値観が変化していく激動の時代、次の日本を誰が背負うのか。野党の体たらくの下での自民党執行部の内紛は、喜劇ではなく悲劇なのでしょう。

青山和弘(あおやま・かずひろ)
政治ジャーナリスト 星槎大学非常勤講師 1968年、千葉県生まれ。元日本テレビ政治部次長兼解説委員。92年に日本テレビに入社し、野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップを務める。与野党を問わない幅広い人脈と、わかりやすい解説には定評がある。昨年9月に独立し、メディア出演や講演など精力的に活動している。

デイリー新潮編集部

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