「タバコを回し吸い」「競馬新聞を渡され…」 全国の刑務所で行われる看守の“抱き込み”

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 塀に囲まれた刑事施設の中で、生活の全てを厳格に管理される拘禁者たち。

 だが、毎日新聞が3月22日に報じた〈元刑務官 金品提供で懲戒〉という記事は、そんな常識を吹き飛ばす衝撃的なものだった。

 事のあらましは、「さいたま拘置支所」に勤めていた男性刑務官(50)が、暴力団組員の被告男性(55)に、5万円の現金を差し入れたり、刑務官の名簿を渡したりと、さまざまな“便宜”を図っていたというもの。同紙の取材に「快適に暮らしたかった」と動機を語った被告だが、実際、全国津々浦々の刑事施設では、どんな“刑務所ライフ”が繰り広げられているのだろうか。

 自身も詐欺罪で実刑判決を受け、約6年を北陸地方の刑務所で過ごしたという元暴力団組員の男性曰く、

「看守も囚人もしょせんは同じ人間。“私語も便宜供与も一切ない”なんて刑務所は、どこにもないでしょう」

 商売柄、数字に強かったこの男性は、刑務所内の洋裁工場で“計算工”に抜擢されたという。

「計算工は懲役囚たちの給与計算をしたりする管理役。いわばオヤジの助手で、一応、エリートなんですよ」(同)

競馬新聞を渡され

 刑務所では、各工場に配置された刑務官を“オヤジ”と呼ぶのが習わし。

「計算工は、オヤジが座る『担当台』の横にいるから、当然、オヤジとも仲良くなる。あるときは競馬新聞を渡されて“おい、予想してくれ”と。その代わり、ときどき看守部屋の掃除に呼び出されるんです。ちょうど競馬中継の時間で“テレビは見るんじゃねぇぞ”なんて笑いながらね」(同)

 もちろん、こうした人情派の刑務官ばかりでなく、どこの刑務所にも口うるさい“鬼看守”はいる。

「そういう看守は“マムシ”なんてふうに呼ばれ、大抵は工場の担当にはならない。囚人ウケが悪いと、工場の生産量はたちどころに落ちるし、最悪の場合、暴動なんて可能性も。程よくガス抜きができる看守なら、囚人の方も“うちのオヤジに恥はかかせられねぇ”とせっせと懲役に励むことになるというワケです」(同)

 刑事施設への関心が格段に高い暴力団関係者の間では、どこが快適か、が話題に上ることも多い。

 30年近く前に、北海道の網走刑務所に収容されていたという暴力団関係者は、

「映画の影響で日本一厳しい監獄のイメージが強い網走ですが、北海道の刑務所は寒冷地仕様で舎房も暖かい。看守の人柄も西日本に比べれば温厚で、金属工場の懲役囚たちなんて、誰かが外から仕入れてきたタバコを溶接用のかぶり面の下で回し吸いしていました。自分らの若い頃は、府中刑務所に鬼軍曹のような看守がいると評判。行先が網走と分かったときは、胸を撫でおろしたもんですよ」

 ムショにはムショの人間ドラマが隠れている。

週刊新潮 2022年4月7日号掲載

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