安倍元総理の「ゼレンスキーとの友好関係」アピール 過去には“プーチン詣で”に執心

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問題は会談の仕方

 相手国元首との接触なくして何事も始まるまいというのはその通りだろうが、北方領土問題に詳しい北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの岩下明裕教授は手厳しい。

「問題は会談の仕方ですよね。安倍氏は在任期間中、プーチンと27回も会談していますが、日本国内で会ったのはたったの2回です。外交は相互主義が原則ですから、どう考えても対等の外交とは言い難い」

 安倍氏がプーチン詣でを続けたワケについては、

「祖父の岸信介が日米安保の改定を手掛けたように、安倍氏は偉業を達成し、歴史に名を残したかったのだと思います。対ロ平和交渉は歴代総理が積み残してきた外交的課題でしたから」

 一方、現代ロシア論が専門の袴田茂樹青山学院大学・新潟県立大学名誉教授は次のように語る。

「安倍元総理の対ロ外交は、これまでのメディアの報じ方にも引きずられてしまったところがあります」

 というのも先の交渉中断に関しても、NHK等が、

〈ロシア外務省が北方領土問題を含む平和交渉を中断する意向を表明〉

 などと伝えているが、

「“北方領土問題を含む”なんて言うはずがない。日ロ間に領土問題は存在しないというのがあちらの立場です。実際、原文を確認しましたが、そんなことは述べられていません」(同)

安倍元総理が勝手に抱いてきた幻想

 今にしてなお、大手報道機関は条件次第では、北方領土返還交渉の余地ありという誤解を国民に与えている。在任中の安倍氏も、そうした視点をそのまま受け入れてしまっていたという指摘だ。

 だが振り返ると、プーチンは05年に国営放送で、

〈南クリル(北方四島)は第2次大戦の結果ロシア領になり国際法的にも認められている〉

 と一方的に断言し、その後立場を変えていない。

「私はプーチンが2島返還論に乗り気だったこともなければ、北方領土問題の交渉に前向きだったこともないと思っています。それは、安倍元総理が勝手に抱いてきた幻想です」(同)

週刊新潮 2022年4月7日号掲載

特集「敗滅のプーチン」より

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