「成人年齢」引き下げで親が気を付けるべきことは? 怪しい「占いサイト」に要注意
結婚を親や学校は止められない
そう語るのは、各地の学校でスクールロイヤーを務める弁護士の神内聡氏。4月以降は教育現場の混乱も予想されるという。
「分かりやすい例を挙げると、生徒が18歳になったら本人の意思だけで“退学”ができてしまう。在学契約の当事者をどう解するかにもよりますが、親が同意していないというだけでは、学校側は生徒の申し出を拒否するのは難しい。同じく、結婚についても親や学校は止められない。生徒同士の結婚ならまだしも、相手が反社会的勢力だったら、配偶者という立場を利用して、学校側に無茶な要求をしてくるリスクもないとは言い切れません」
加えて、親が不安を禁じ得ないのは“契約”に関するトラブルだろう。
民法では、未成年者が保護者の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができる。今回の改正によって、この「未成年者取消権」を18、19歳は行使できなくなるのだ。そこで問題視されているのは、未成年者への出演強要がたびたび取り沙汰されてきたAV(アダルトビデオ)の存在に他ならない。
若いほどカネになる
社会部記者が言う。
「とりわけ、2017年にモデル募集サイト運営者の男が逮捕された一件は大きな波紋を呼びました。男はコスプレモデルを募集すると偽って女性を呼び出し、200人以上とAV出演の契約書を交わしていた。最初に身分証を撮影して個人情報を握り、女性が途中で出演をためらうと“こっちには弁護士がいる。断ると大変なことになるぞ”と迫った。被害者の大半は今回の民法改正で成人扱いになる18、19歳の女性でした」
AV業界も健全化に取り組み、ここ数年、大手メーカーでは10代の女優は“ゼロ”だという。
だが、神内氏によれば、
「事前の説明がないままAV出演を強制されたのなら、消費者契約法や詐欺・強迫などを理由に契約を取り消すことができます。しかし、18、19歳の女性が内容を理解して結んだ契約については、保護者の同意がないという理由だけでは取り消せなくなる。実際の教育現場では、同じ18歳でも大人として扱っても問題ない生徒もいれば、そうでない生徒も混在しています。それこそ、好奇心やお小遣い目当てに、親の目を盗んでAVに出演する女子高生も現れかねません。学校側は生徒が被害に巻き込まれないよう注意する一方、生徒自らが飛びつくことを不安視しているのです」
『スマホ危機 親子の克服術』の著者でジャーナリストの石川結貴氏も、次のように警鐘を鳴らす。
「子どもたちのスマホやネットにまつわるトラブルを取材してきた私としては、SNSや動画サイトを通じた被害の拡大を心配しています。ネット上で暗躍する悪徳業者は、相手が若ければ若いほどカネになると考えている。当然ながら、今後は18、19歳が狙われやすいと認識してほしい」
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