「プーチン孤立」報道で浮かぶクレムリンの米スパイ 諜報戦でロシアは完敗の舞台裏

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 多数のロシア軍将官の死亡や、首都キーウ近郊からのロシア軍撤退など、ウクライナ軍の善戦が伝えられる。ウクライナ軍を支えるために、アメリカやイギリスが高い諜報能力を発揮していることを指摘するのは、国際アナリストの春名幹男氏である。ロシア側の脅威となりうる情報をどのように収集し戦略に生かしているのか、また、プーチンの側近にいるとみられるスパイの存在についても聞いた。

将官が7人死亡

 先月26日、ロシアが制圧したウクライナ南部ヘルソン近郊の飛行場で、ロシア軍のレザンツェフ中将がウクライナ軍による攻撃によって死亡したと報じられた。

「ウクライナ入りしているロシア軍の将官20人の中で、7人目の死亡者です。これだけ死んでいるのは、ロシア軍の司令官が今どこにいるのか、ウクライナ側に“だだ漏れ”になっていることの証左でもあります。さらに、『〇〇が死んだ』と報告するロシア軍の通信を傍受して、ウクライナ軍がその攻撃の成功を確認しているのではないか、とも言われています」(春名幹男氏)

 ロシア軍内部の情報が、筒抜けになっているとはどういうことだろうか。

「いまや、ロシア軍内部の通信は、ほぼ100%、ウクライナ側が把握しているのではないでしょうか。アメリカの支援を含め、ウクライナ側が通信傍受に関してある程度高度な技術を持っているということもありますが、それよりもロシア側が相当ずさんだということが言えると思います。というのも、近年ロシア軍が攻撃した相手は、チェチェン、シリア、ジョージアなど、いわば情報技術に後れを取っている国々で、対策を取る重要性の認識が乏しかったのでしょう。一方で、ウクライナ軍は、2014年のクリミア半島侵略以降、ロシア軍の侵攻を見据え、アメリカの支援を受けながら備えを続けてきました」(同)

軍事衛星、ドローンでの監視も

 アメリカは、情報を提供することでウクライナを助けているというわけだ。

「戦況を把握する方法は、通信傍受以外にもいくつかあり、その1つが、軍事衛星による宇宙からの監視です。軍事車両の位置や兵士が何人いるのかといった情報まで、衛星からリアルタイムで把握し、それをアメリカがウクライナに提供しています」(同)

 アメリカは、自国で情報を得るだけでなく、遠隔操作できる無人の小型航空機・ドローンを供与するなどしてウクライナ軍へ物的な支援も行っている。

「ドローンは、攻撃だけでなく監視目的としても使われています。また、アメリカ軍の電子偵察機からの監視については、ロシア軍との直接の接触を避けるためにウクライナ領空には侵入せず、黒海やポーランド上空から監視をしているようです。そういった情報を基に、ウクライナ軍は作戦を練っているのでしょう」(同)

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