会話中の「気まずい沈黙」 無理なく切り抜ける“意外なコツ”

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 誰も何も話さない。何か話した方がいいと分かっていても、どうしたらいいか分からず焦りだけが募る……誰もが一度はそんな経験があるはずです。日本テレビの藤井貴彦アナウンサーは、そんな時、「ある手段」を使って乗り切ると語っています。著書『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』から紹介します。

会話中に沈黙が続いてしまったら……

 もし、自分が参加している会話や会合に沈黙が生まれた場合、あなたならどうするでしょうか。もちろんそこに司会者がいれば心配ありませんが、いつも頼もしい司会者がいてくれるとは限りません。

 司会とは「会を司る」「会をコントロールする」という意味ですが、ここに沈黙回避の答えが隠れています。サッカーで言えば誰かにパスを出すだけでいいのです。

 例えば、こう聞いてみてください。

「これ、田中さんはどう思いますか?」

 無理やりシュートを打とうとする必要はありません。ずっとパスを出していればいいのです。

 私たち日本人は自分からはなかなか意見が言えませんが、聞かれると意外にも言葉が出てきます。これをつなげていけばいいのです。

「パス回し」で会話は動き出す

「じゃあ、吉田さんはどう思う?」

「高橋さんはどう感じた?」

 こう聞いていくだけで、みんなの意見が集まり会話になります。これは1対1の会話でも同じです。無理せず相手にパスを出すことで沈黙はたいてい回避できます。そこにご自身の意見や感想を織り交ぜていけば十分に会話になり、沈黙は回避できます。

 昨今、特にリモートでの打ち合わせが多くなって、初めてお話しする人と1対1になることもあると思います。そんな時も同じです。その人に、意見を求めながら会話を進めていけばいいのです。質問からの答え、答えからの質問、という言葉のパス回しを繰り返すだけで沈黙は自然となくなっていきます。それどころか、十分に意義のある話し合いになっているのです。

 そのパス回しの中で、「これだ」という答えが出てきたらこっちのもの。会話はあっという間に弾んでいきます。サッカーと同じように、ベテランで経験豊富な司令塔がいればチームはまとまります。会話が広がる仕組みはパスを出すこと。意外に簡単なことで会話は作られているのです。

思いもよらぬ質問をされた時には

 誰かと会話をしている時や人前で話している途中に、何か質問をされてパニックになったことが皆さんはあるでしょうか。

「その前に、経緯から説明してもらえますか」

 こんな話の流れを止めるような発言をされたら、誰でも少し焦ります。そんなことにならないように質問を受け付けないオーラを出す人もいますが、「想定外への不安」からくるものです。また、いつもなら答えられるのに、しゃべっている途中なので、不意を打たれて焦ってしまうのです。

「リフレイン」で時間を生み出す

 こういう時にはまず、冷静になる時間が必要です。そして、冷静になる時間を捻出するためには「リフレイン」が効果的です。

 まず、相手の衝撃的な発言をリフレイン、つまりそのまま繰り返して口に出します。ここで、冷静になる時間を捻出します。

「今のご質問は、経緯がどうなっているかということでいいですね?」

 と、確認するようにリフレインできれば、相手が「そうです」と答える時間も含め、時間を捻出できます。またこのリフレインで会話が途切れることは避けられますし、会話のリズムも失われません。この間に冷静さを取り戻すのです。

 一方、このように途中でカットインしてくる人は、独特のリズムを持っている人か、あえて議論を仕掛けようとする傾向のある人です。そういう人ほど受け答え次第では、調子に乗ってしまう可能性があるので、リフレインしながら時間を作り、冷静に対応するのがベストです。ここまでもっともらしく説明してきましたが、まず相手の発言を冷静に繰り返す、それだけです。

 私たちはとにかくスムーズな会話をするよう自分たちに課すので、アクシデントに対応する準備まではしていません。ただリフレインを使って落ち着いて対応すれば、状況は変えられます。ついでに相手の肩の力も抜いてあげられれば最高ですね。

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※『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』の本文を一部抜粋・再編集したものです。

藤井貴彦(ふじいたかひこ)
1971年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務め、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの際には、自ら現地に入って被災地の現状を伝えてきた。新型コロナウイルス報道では、視聴者に寄り添った呼びかけを続けて注目された。

デイリー新潮編集部

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