日テレ藤井アナが試行錯誤の末に導き出した、気持ちよい会話を生む「3つのルール」

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 相手に気持ちよく話をしてもらうには、どうしたらいいのでしょうか。その誠実な姿勢から、“日本テレビの良心”といわれる藤井貴彦アナウンサーは、三つの事に気を付けているといいます。著書『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』から紹介します。

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 誰かと会話をする際、どうしたら相手が気持ちよく話をしてくれるでしょうか。

 例えばコンビで活動する芸人さんは、相方の勢いを生かすように、相槌を打ったり、ツッコミを入れたりしていますよね。ここにヒントがあります。

 具体的にはどうしたらよいでしょうか。三つの過程があります。

(1)「相手を知る」

 これは三つの過程の中で最も大切な要素です。コンビを組む芸人さんなら当然相方のことはよく知っていますね。同じように、話を聞く相手がどんな人なのかを時間のある限り調べます。これはみなさんすでに行っていることだと思いますが、ある程度その人の特性をつかんでおけば、実際に話を聞く時に強い支えとなります。

(2)「背中を押す」

 一方で、相手方も自分の言葉が伝わっているのか、不安に思っています。ですから、適切に相槌を打って、こちらはあなたの話を理解していますと伝えることが大切です。それによって相手もエンジンがかかってきて、こちらが予想もしていなかった素敵な一言が飛び出してくることもあります。芸人さんも相方の話をよく聞いて、相槌を打っていますよね。うなずいてくれるってとても心強いのです。

(3)「質問をする」

 会話中に、いくつか質問をすることも重要です。それは相手にとって、話が伝わっているのかを確認する機会につながるからです。話がある程度進んだ時に、「ということは、こんな時はこうしたらいいのですね?」と質問をすると、相手はその質問から自分の話が伝わっているかを判断します。伝わっていることが確認できれば、さらに気持ちよく話し続けてくれるはずです。芸人さんが軽いツッコミを入れて話を盛り上げるのと似ているでしょうか。ただ、ここで注意が必要なのですが、質問しすぎて話の腰を折らないようにしてください。相手が気持ちよく話していれば、質問はほぼ不要なのです。

 話し終わった相手が「いや、しゃべりすぎたなあ」とか「余計なことまで言ってしまった」といった感想を漏らしたら、こちらのもの。これは気持ちよく話をしてくれた証拠ですし、話を聞くこちら側も充実した時間になっていることでしょう。

 相手を勢いに乗せる「三つの過程」、ぜひお試しください。

いい会話のためなら「ずるい」準備もOK

 会話に臨むために準備をするという方はあまりいないでしょう。まず何のために準備をするのかわかりませんよね。でもほんの少しの準備で、会話が飛躍的によくなります。どんな準備をするのか一例からご紹介しましょう。実は少しだけ「ずるい」準備をするのですが、最終的にみんなが楽しければそれでいいのです。

 私はたまに、系列局にお呼ばれしてゲスト出演させてもらうことがあります。週末朝の「地元密着の情報番組」に生出演するような形です。そんな番組では、ほぼ間違いなく同じ質問をうけます。それは例えばこんな感じです。

「宮崎のいいところを教えてください」

 実際には宮崎県に日テレ系列のテレビ局はないので一例なのですが、こういった質問にはいつも悩んでいました。イメージの中から「地鶏がおいしいですよね」と答えてもインパクト不足ですし、具体的に答えられないと雰囲気も悪くなります。私は本当に宮崎が好きなのに、その思いが伝えられず苦しんでいたのです。

 さて、こんな私が、その後に取り組んだことが二つあります。

 一つ目は「周辺から話を聞いておく」ことです。例えば、宮崎にゆかりのある人から「宮崎の皆さんが誇りに思っていることは何ですか」と聞いてしまうのです。友人の答えと自分の思っている宮崎のいいところが一致すれば、強い後ろ盾となります。

 もう一つは「答えから聞いておく」ということです。

 例えば私の場合で言えば、宮崎にいる後輩アナウンサーに直接「どう答えたら県民の皆さんが喜んでくださるか」と聞いてしまうのです。なんだかずるいやり方にも思えますが、その答えを聞いた後に追加の努力をすればいいのです。

一つのキーワードから広げていく

 私はかつて、愛媛県にある系列局の南海放送にゲストとして呼んでもらうことがありました。その時ももちろん「今、愛媛県内の注目のニュースは何ですか」と愛媛の後輩アナウンサーに聞いておきました。すると、「しまなみ海道のサイクリング」という興味深い答えが返ってきたのです。愛媛と広島の島々を結ぶしまなみ海道は、当時、東京のテレビ番組でも取り上げられていました。

 こんなヒントをもらったところで、自ら調べを進めていきます。少し検索するだけで多くの情報が得られます。例えばしまなみ海道では自転車のレンタルができて、料金を払えば「借りた場所ではないポイント」にも返却できるのだそうです。また、なんと当の南海放送に「サイクリング部」があるじゃないですか! この情報を番組で披露したら出演者も番組スタッフも驚いてくれるかもしれない、というように調べを進めていくのです。たった一つのキーワードでも、その先を掘り下げていくと芯を食った情報が手に入って、どんどん興味が広がっていきます。

 スタートの時点では先に答えを聞く「ずる」をするのですが、結果として愛媛の魅力に深く入り込めればそれでいいのです。こんなふうにして会話の準備を行います。実際の放送では、調べたものの全てを出し切ることはできませんでしたが、会話はとても楽しく進んでいったのでした。

 ただ、これだけ一生懸命準備をしてもやっと地元の皆さんに近づけたかどうか、といったレベルです。ですからこの情報だけで得意げに話してはいけません。自分で一生懸命集めた情報であっても謙虚に披露することが大切です。これが、いい会話にするための最後の仕上げです。愛媛でしまなみ海道の話を得意げにしてしまった反省を込めて、みなさんにお伝えしておきます。

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※『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』より一部を抜粋して構成。

藤井貴彦(ふじいたかひこ)
1971年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務め、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの際には、自ら現地に入って被災地の現状を伝えてきた。新型コロナウイルス報道では、視聴者に寄り添った呼びかけを続けて注目された。

デイリー新潮編集部

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