「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言

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カリスマ歌手が反戦歌を公開

 流れを作ったのは、ロシア国営放送のスタッフ、マリーナ・オフシャンニコワ女史だ。14日、ニュース放映中にキャスターの後ろに映り込み、「NO WAR」と書いた紙を掲げた姿は世界中で流されたから、ご記憶の方も少なくないだろう。

 これに続いて、16日には、世界的バレエ団「ボリショイ・バレエ」のプリマ、オルガ・スミルノワが侵攻に抗議して国を離れた。

 17日には、人気女性歌手のゼムフィラが反戦歌を動画で公開。彼女もまたロシアを脱出している。

「とりわけゼムフィラは、日本で言えば、宇多田ヒカルや椎名林檎のような、30~40代に絶大な人気を誇るカリスマ的歌手です」

 と佐々木教授が続ける。

「こうしたスターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性があるのです」

 女性や文化人だけでなく、副首相を務めたこともあるクレムリンの元高官や、複数のオリガルヒ(新興財閥)も続々と反戦を表明し始めている。

学校での洗脳教育

 この状況に危機感を覚えたのか、対するプーチンも“世論工作”に躍起だ。

 18日にプーチンは、モスクワのスタジアムで開かれた式典に出席した。暗殺を警戒し、潜伏生活を続けているともいわれてきた大統領が大勢の国民の前に姿を現したのは、開戦以来初。演説では改めて戦争の正当性を強調したが、

「この時も、公務員や国営企業などに大量の動員がかかったといわれています」

 と佐々木教授。

「恐ろしいのは、彼が子どもたちまでを『親プーチン運動』に駆り出していること。今、ロシアの学校では子どもたちが、勝利を表す『Z』のマークが描かれたシャツを着てダンスを踊らされたり、『Z』の人文字を作らされたりと、半ば洗脳のような教育が進められている。これは国内で高まる自らへの批判を恐れている証左といえるでしょう」

 同時に、反対派への“締め付け”も強化している。

 政府は3月、国内でのFacebookやTwitter、3800万人もの利用者がいるとされるInstagramの接続を相次いで遮断した。SNSはロシア当局が隠したい「不都合な真実」に溢れている。そこから目をそらせるためであろう。

 更にはこの3月に法改正を行い、軍に関する虚偽情報の拡散や、信用失墜に繋がる行為をした者に対し、罰金や自由剥奪の刑を科すことができるようにした。

 佐々木教授が続けるには、

「合わせて、最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言しています。これは、国内の反対派にレッテルを貼り、排除しようとするもので、完全に冷戦下のKGBの発想。まるでソ連時代のごとく国民をコントロール下に置こうとしているかのように見えます」

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