シイタケを叩くと収穫量が2倍に? 画期的な研究結果が…メカニズムは不明

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 九州の大分県は「干しシイタケ王国」だそうで、生産量はじつに日本の約4割、全国1位を誇る。その大分の県立農林水産研究指導センターから興味深い発表が。「ほだ木」と呼ばれるシイタケ栽培の原木に散水し、ハンマーで一定回数叩くと収量が倍増するという。

「シイタケの生産者さんに“2年目を迎えたほだ木からの発生量が悪い”と相談されたことが、今回の研究のきっかけでした」

 とは同センターの研究員。そこで、2~4月に収穫される「低温性品種」で2017年度から実験を始めた。

「最初に行ったのは『天地返し』という方法です。原木の天地をひっくり返せば、翌年多く発生する。これは昔から言われていましたが、高齢の生産者さんには骨の折れる作業で、最近は行われなくなっていました」

 長さ1メートル、直径10センチほどの原木を逆さにしてみるも効果はなし。そこで翌年度は原木の木口(こぐち)、つまり切り口や樹皮を3回叩く方法を試した。

「これも昔から伝わる方法です。雷が落ちるとか、冷水につけるとか、原木に刺激を与えると発生量がよくなると言われていました。中でも手間もコストもかからない方法として『打木(だぼく)』を選んだのです」(同)

詳細なメカニズムは不明

 だが効果は見られず。19年度は木口3回に加えて、原木胴部の樹皮も上から下まで均等に5回、これを手前と左右、背後の4面計20回叩く方法を採ってみた。

 するとまぁ、収穫量は約5倍に。ただ、

「シイタケ一つ一つのサイズが小さく、お互いに重なって変形してしまう欠点がありました」(同)

 なるほど。数叩けばいいってものでもなかったらしい。それに、生産者の高齢化が進み、体力的な負担はネックだ。そこで一昨年、樹皮の手前と背後を5回ずつ、計10回叩くことに。結果、収穫は打木なしの約2倍となった。そして、

「シイタケの質も許容範囲でした。年数が限られた試験の中で、これがベターな結論かなと考えています」(同)

 しかし、詳細なメカニズムは不明らしい。この研究について甲南大学特別客員教授の田中修氏(植物生理学)が言うには、

「原木を刺激すると収量が増えるというのは知られていましたが、今回の成果は、いつ頃、どこを、どれだけ叩けばいいのかを明らかにし、生産者の実用に足るデータを出したということ。評価できるものですね」

 同センターでは昨年12月に実験結果を発表し、生産者に指導もしている。早速、収穫増が期待できる?

「低温性品種に関しては今季、九州地方でほとんど雨が降らず、しかも気温も低すぎたせいで、栽培に適した状態になっていません。従って“今年は叩いても無駄だろう”というのが私たちの感覚です」

週刊新潮 2022年3月24日号掲載

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