ウクライナ危機で「ユニクロ」はなぜ失敗した? 危機管理の専門家が解説

国内 社会

  • ブックマーク

テロへの注意も必要

 こうした状況下でロシアでのビジネスを継続する企業は何に気を付けるべきでしょうか。

 最も注意してほしいのは“カントリーリスク”です。“民間よりも国家の利益が優先される”という点を常に念頭に置く。実際、プーチン大統領は撤退した外国企業の資産を差し押さえ、国有化するとの見解を示しました。いわば“火事場ドロボウ”に遭うようなものですが、これが現実のものとなると、ロシアでの設備投資は水の泡となり、ビジネスがもたらす利益も消し飛んでしまうため、株主代表訴訟を起こされるリスクも生じます。

 また、ロシアから「非友好国」の烙印を押された日本の企業は、同国の情勢が悪化した際、過激な団体や個人からのテロにも細心の注意を払う必要があります。

 私どもとしては、ロシアのような国では自社の直営工場を設けるといった直接取引をするのではなく、間接的にビジネスを行うことを勧めています。現地で正確に情報収集できるルートを確立し、深入りは避ける。そして、不測の事態が起きても、自社の人・物・カネ・情報を守る準備を進めてほしいと考えています。

田中優介(たなかゆうすけ)
(株)リスク・ヘッジ代表。1987(昭和62)年、東京都生まれ。明治大学法学部卒業後、セイコーウオッチ株式会社を経て、2014年、株式会社リスク・ヘッジ入社。企業の危機管理コンサルティングに従事、現在は同社代表取締役社長。岐阜女子大学特任准教授も務める。著書に『地雷を踏むな 』(新潮新書)など。

週刊新潮 2022年3月24日号掲載

特集「プーチンの断末魔」より

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。