元陸上幕僚長が提言「敵基地攻撃能力保有は急務」 現状では迎撃できない「極超音速ミサイル」

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 日本を取り巻く安全保障環境は、いまや危機的状況に瀕している。国際秩序と法を蔑(ないがし)ろにし、「力」を背景に繰り返される隣国からの軍事的な挑発や攻撃を、我々はいかに防ぐべきなのか。元陸上幕僚長の岩田清文氏が、その抑止のための「反撃する力」について解説する。

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「やられたらやり返す。倍返しだ!」。数年前に人気を博したテレビドラマの決めゼリフは、安全保障の世界にも当てはまる。

 仮にAという国が隣国のBへの攻撃を検討した場合、そのB国が常々、「我が国への攻撃は一切許さない。やられたら必ず報復する」と公言しており、実際に反撃する能力を持っているとする。当然ながら、A国は自国が被るであろう損害を考慮せざるを得ず、攻撃には慎重になるはずだ。

 一方で、B国が「我々は周辺の国々を信頼しているから、反撃可能な軍備は保有しない」と国際社会に宣言していたらどうか。A国に限らず、周囲に「リスクが少ないから攻めてみよう」との誘惑に駆られる国が出てきてもおかしくはない。

世界のどの国にも「個別的自衛権」「集団的自衛権」が

 もうお分かりだろう。「A国」とは中国や北朝鮮、ロシアであり、「B国」は、いまの日本にほかならない。中国は尖閣諸島の海域で領海侵犯を常態化させており、“統一”を目指す台湾への軍事的挑発はエスカレートするばかり。その中国と歩調を合わせるように、北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験を繰り返している。そして、ロシアはウクライナへの侵略という国際秩序と法を無視した暴挙に及んだ。

 幸いにして我が国は、戦後77年という長きにわたって、他国との軍事的衝突は一度も経験せず平和を享受してきた。それはひとえに自衛隊の存在と、昭和35年に改定された日米安全保障条約の賜物といえる。この条約に基づいて、日本は米軍に土地や経費を提供し、米軍は極東地域の平和と安定のために日本の防衛を担ってきた。これにより、日本は反撃力を保有しないまま、他国の侵略を防いでこられたわけだ。

 国際社会を見渡せば、国連憲章の第51条の定めによって、世界のどの国にも自国を守る「個別的自衛権」と、他国とともに防衛を担う「集団的自衛権」の保有が認められている。

 ところが日本では、いまも“神学論争”のような憲法解釈が続いている。その影響で、自然に付与されている集団的自衛権は限定的な行使しかできないとされているのは周知の通りだ。

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