雪害で市民猛反対の札幌五輪 「羽生結弦」を広告塔にしたJOCの思惑

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 北京でのパラリンピックが閉幕したばかりなのに、気の早いことではある。8年後の冬季五輪に札幌市が立候補を模索、招致活動が本格化しているのだ。去就が注目されるアスリートまで“広告塔”として駆り出されたが、当の地元はそれどころではなく……。

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「札幌でオリンピックの開催が決まったら」

 という仮定を口にした羽生結弦(27)は続けて、

「やっぱりフィギュアスケートの選手の皆さんが最高の演技をしてほしいですし、僕も出たいです。ふふふ。でも、それくらい楽しみにしています」

 そう話し、カメラに向かって手を振るのだった。

 3月4日、日本オリンピック委員会(JOC)の公式ツイッターに登場した羽生は、札幌五輪への思いを語った。北京五輪後、今シーズンの総決算となる世界選手権はケガで欠場を表明。今後の進退について明言を避けていただけに、現役続行を期待する一部のファンからは歓喜の声が上がったのだ。

 スポーツ紙記者によれば、

「羽生と同じ動画に登場した北京五輪銅メダリストの宇野昌磨は“さすがに現役でやっている可能性はかなり低いけれども”と断った上で、“札幌五輪を支えられたら”と口にしましたからね。仮に札幌で開かれても、その時、羽生は35歳です。“出たい発言”はリップサービスだとしても、自らの進退を思わせぶりに話し、招致と絡めたのにはいささか興ざめという指摘もありましたね」

 あの手この手で世論を盛り上げたい。そんなJOCの思惑が透けて見えよう。

除雪活動が先だろう

 2030年の冬季五輪には、札幌の他にカナダのバンクーバーやアメリカのソルトレークシティー、共同開催でスペインとフランスが立候補を予定している。

 札幌の地元記者に聞くと、

「1972年に冬季五輪を行った札幌に対し、北米の都市は今世紀になってから開催されている。また温暖化がこのまま進めば、欧米の候補地では雪が降りにくくなり、札幌しか適地がなくなるとの見通しも出ています」

 だが、温暖化による異常気象こそが、札幌にとっては大きな問題を孕(はら)んでいる。

「ここ数年、北海道は大寒波に襲われ、今年は特に札幌が観測史上最多の積雪でJRや高速道路などが終日ストップし、救急車が雪に阻まれるほど市民生活が大混乱。自衛隊に災害派遣を要請しないなど行政の対応の遅れを問う声も多く、菅義偉前総理の愛弟子といわれる北海道の鈴木直道知事や、秋元克広・札幌市長の手腕に疑問符がついています」(同)

 招致活動より除雪活動が先だろうという不満が募っているというのだ。奇しくも札幌市は、羽生の動画が公開される2日前から、市民を対象に五輪開催の賛否を含めた「意向調査」を開始した。札幌市は賛否の結果は参考にするのみで、あくまで招致活動は続けると予防線を張るが、スポーツ評論家の玉木正之氏は、

「世論が賛成と反対で二分されているのだから、きちんと住民投票を行って結果を招致活動に反映させるべきです。そもそも東京五輪で我々の税金がいくら使われたのかなどの総括ができていない中で、札幌五輪を呼ぶのには反対です」

 コロナという災いにも翻弄された東京五輪の二の舞だけは避けるべきだろう。

週刊新潮 2022年3月17日号掲載

ワイド特集「「氷上の戦い」より

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