ウクライナ侵攻時に取り残された中国人は6000人…プーチンに潰された習近平のメンツ

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どの程度伝えられていたのか

 中国国内では政権批判につながる言論は禁止されているが、一部のネット上では「なぜ友好国なのに侵攻すると教えてもらえなかったのか」と疑問視する声が出ていたという。

 本当にプーチン大統領は、習主席に断りなく侵攻を開始したのだろうか。

「それは考えにくいです。ある程度は伝えられていたとは思いますよ。でも、まさか100年前でもあるまいし、3方向から戦車部隊をキエフに侵攻させるなんていう大規模な軍事侵攻を起こすとは思ってはいなかったのでしょう」

 こう語るのはロシアの軍事事情に詳しい専門家である。

 北京オリンピック開会式に各国の首脳がボイコットするなか、北京にやってきたプーチン大統領を習主席は大喜びで歓待した。釣魚台迎賓館での首脳会談後は昼食会でもてなし、ツーショット撮影。世界に両首脳の親密さをアピールした。

「あの時、欧米からそっぽを向かれていた習近平は、プーチンに感謝していたと思いますよ。ロシアがウクライナに侵攻したのが、オリンピックが閉会した21日以降だったことも、明らかに中国への配慮です。おそらく会談の場などで、今回の侵攻についてある程度の仁義は切っていたと思われます。ただ、こんな大規模侵攻をするような言い方ではなかったのでしょう。せいぜい、親露派が支配していた東部地方の支配地域を広げ、ゼレンスキー政権に圧力をかける軍事作戦くらいの伝え方だったのではないか」(同)

ジレンマに陥った中国

 軍事侵攻が始まって4日目の27日、中国の王毅外相は、イギリス、フランス、EU(欧州連合)との電話会談で、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大を危惧するロシアの立場に理解を示すと断りながら、「ウクライナの現在の情勢は望ましくないものである」とロシアに釘を刺すような発言をした。この発言を聞いて専門家らは「やはり中国は知らされていなかったのか」との見方を強めたという。

「プーチン大統領が、みなまで腹のうちを伝えなかった理由としては、中国側からアメリカに情報が漏れることを恐れた可能性はある。対立関係にある米中ですが、冷戦時代の米露関係がそうであったように、決定的な間違いが起きないように高官同士のパイプは維持してあります」(同)

 いずれにしろ、想定外のプーチン大統領の暴走によって、習主席は難しい立場に立たされてしまった。

「アメリカに対抗していくうえで、今後もロシアに頼らざるを得ない。一方、ロシアに巻き込まれてしまっては、国際社会で孤立しかねない。13日にニューヨークタイムズが、ロシアが侵攻直後、中国に軍事的・経済的支援を要請したと報じましたが、中国外務省の報道官は『ニセ情報だ』と怒っています。事実かどうかはさておき、いまこのタイミングで中国がロシアに軍事協力するのは現実的ではないような気がします」(同)

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