「秀和レジデンス」なぜ今注目? 東京を代表するレトロマンションの“マニアックすぎる”魅力とは

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「秀和専門サイト」を立ち上げ、ついに住むように

 もう一人の著者で、不動産とリノベーションを手掛ける「株式会社Style&Deco」代表取締役の谷島香奈子さんも、秀和の魅力にとりつかれた一人だ。

「15年ほど前、初めて秀和を見た時の衝撃は今でも覚えています。日光を受けてキラキラと光る青い瓦屋根と白い塗り壁のコントラストの美しさに「ヨーロッパの城みたい! これが大都会!」と驚いたんです。私が生まれた佐賀県には秀和どころかマンションすらあまりなかったので、余計に衝撃的だったのかもしれないです」

 それから日を空けずにいくつかの秀和と出会った谷島さん。そのうち「最初に見た秀和と似てるけど、雰囲気が違うのはなぜ?」「東京都内でよく見かけるけど、一体いくつあるの?」と気になり、「秀和巡り」を始めたという。

「たくさんの秀和を見ていくうちに、バルコニーのアイアンのデザインにハートが用いられていたり、ファサードにイカリのマークがあったり、同じように見えていた秀和レジデンスでも一つ一つ違う顔を持っていることに気付き感動しました。『なんて遊び心のある建物なんだろう!』と」

 そして2010年、魅力を多くの人に知ってほしいと考えた谷島さんは、「秀和レジデンスマニア」という、秀和レジデンスのみを扱うニッチな不動産サイトを立ち上げた。ついには、サイトをつくるだけでは満足できず、実際に秀和に引っ越してしまったというから、そのハマり具合は尋常ではない。

「だってかわいいでしょ」

 そんな秀和に魅せられた二人が協力して作り上げたのが『秀和レジデンス図鑑』。建物ごとに異なる塗り壁の柄やバルコニーのアイアンなどを、たくさんの写真とともに紹介しており、ネット上で「マニアックすぎる」と話題になったのだ。そんな二人に秀和の魅力を聞いてみると、

「高度成長期に建てられているマンションなので、今の時代の建物にはない“おおらかさ”があるんですよね。壁の塗り方や、綺麗に曲げられた柵など、コスト度外視でディテールまで作り込まれている。今回、取材を進める中で当時デザインを手掛けられていた方にその理由を聞いてみると『だってかわいいでしょ』と言われました。コストよりも‟かわいい“を大事にすることができた心豊かな時代を思うと、少しうらやましいような気持になるんです」(hacoさん)

「やっぱり魅力は一目で秀和と分かるデザインですね。マンション自体が一般的ではなかった時代に、お城みたいな建物ができたことは衝撃だったと思うんです。秀和レジデンスの初期の頃は、高級路線だったこともあり医者や芸能人、海外赴任経験者の方など、先進的な方が住まれていたそうです。映画『終わった人』で舘ひろしさんが演じた東大卒のエリート銀行マンが住むマンションは秀和といわれていますが、建物を見るだけで時代背景まで想像してしまうようなデザインは秀和にしかないんじゃないでしょうか」(谷島さん)

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