「秀和レジデンス」なぜ今注目? 東京を代表するレトロマンションの“マニアックすぎる”魅力とは

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一周回って若い人に刺さるデザイン

 そんな秀和レジデンスはなぜ今の時代になって注目を集めているのだろうか。

「私が不動産の世界に入ったころは、リノベした古いマンションに住むのは、マニアックな一部の人だけでした。実は10年前から秀和の本を作りたいと思って企画書を持って出版社を回ったのですが、当時は『マニアックすぎる』と断られていましたから(笑)。でも今は新築マンションにはない趣があり、それでいてお手頃ということで、ヴィンテージマンションを選ぶ方も増えています。そういったニーズもあって、多くの方に興味を持ってもらえているのかな、と思いますね」(谷島さん)

 とはいえ、SNSでの反響には驚いているそうで、

「高度経済成長期の建築が好きな人に刺さるとは思っていましたが、Twitterの反応などを見ていると、幅広い人に興味を持ってもらっているようです。東京に住む多くの人は『青い屋根の変わったマンションよく見るな』と何となく思っているのではないでしょうか? そういう日頃から秀和が気になっていた人たちが興味を持ってくれたのかもしれません。秀和を見て、ある一定以上の世代の方は『古臭い』と感じるのかもしれませんが、若い世代にとっては一周回って新鮮に映るのだと思います」(hacoさん)

細部の意匠は「現在では再現できない」

 若い世代にも注目を集める秀和だが、今後、その数は減っていく可能性が高いという。

「2020年秋、秀和レジデンス第1号の『秀和青山レジデンス』が建て替えられるという悲しいニュースが飛び込んできました。これから新たに建てられることはないでしょうし、古いマンションの修繕は本当にお金がかかるので、残された秀和も建て替えが進むでしょう。建て替えられなかったとしても、細部の意匠は現在では再現できない部分もあります。だからこそ、秀和に興味のある方は今のうちに目に焼き付けることを強くおすすめします。」(谷島さん)

 高度経済成長期の東京を象徴する建物の一つである、秀和レジデンス。その姿が残っているうちにじっくり観察してみてはいかがだろうか。

谷島香奈子(やじまかなこ)
不動産&リノベーション会社 (株)Style & Deco代表取締役。秀和レジデンスの情報を集約した専門の不動産サイト「秀和レジデンスマニア」(http://www.shuwa-mania.net/)、中古マンションリノベのワンストップサービスのパイオニア「EcoDeco」(http://www.ecodeco.biz/)を運営。著書に『中古を買って、リノベーション。』(東洋出版)がある。

haco(ハコ)
古い建物、とくに秀和レジデンスをはじめとしたヴィンテージマンションが好き。街で気になった物を写真に撮りzineを制作している。『いいビルの世界 東京ハンサムイースト』(大福書林)を共同執筆。サイケデリックでキュートなスイーツを制作するpsychedelic sweets spicaとしても活動中。

デイリー新潮編集部

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