ロシア軍失敗の最大の要因は? 「腐敗が横行」専門家は軍の質の低下を指摘

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第1プロセスすらままならず…

 2月24日、電撃的な侵攻開始から2週間。未だウクライナの抵抗は続いている。

「侵攻開始直後、クレムリンに非常に近いことで知られる政治学者が“大統領に代わって”として、プーチンが描いていたスケジュールを公表しています」

 と述べるのは、時事通信モスクワ支局長を務めた、拓殖大学海外事情研究所の名越健郎教授だ。

「それによれば、作戦は5段階。初日に制空権を奪い、ウクライナ軍の包囲と武装解除を2月末までに終える。3月初めまでに反ファシスト勢力が政権を獲得し、新しい権力機関が誕生する。その後、数カ月かけて国家機関を再建するプロセスを開始する――とあります」

 が、現状では第1プロセスの「制空権を奪」うことすらままならない。

「全く計画通りにいっていないのは確かです」(同)

 それを示す騒動も起きた。ロシアのある国営メディアが、侵攻開始から2日後の2月26日、「ウクライナはロシアに戻ってきた」との記事を配信。すぐに取り消されたが、これは予定稿を誤配信したものだ。当初、プーチンは2日でウクライナの現政権を倒せると考えていたことの証左である。

もともとロシア軍は腐敗が横行

「ロシアの当初のもくろみが外れているのは間違いありません」

 とは、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏。

「原因は、ウクライナ軍をなめてかかったこと。本来であれば、最初にミサイルか敵防空網制圧機によって防空戦力を無力化し、その後に空爆、地上で侵攻します。しかし今回は、初日から地上部隊が領内に侵攻し、キエフ郊外の空港への空挺作戦まで敢行されました。ウクライナ側の抵抗を相当低く見積もっていないとこの作戦は取れません。あっという間にキエフは陥落する、と楽観的に見ていたのでしょう」

 加えて、軍の質の低下を指摘するのは、元防衛大学校教授で、国際問題研究家の瀧澤一郎氏である。

「もともとロシア軍は腐敗が横行している上に、侵攻前には、退役将校の会が侵攻に反対し、プーチンに公開書簡を出すなど、統率が取れていない。実は今回、ロシア軍の先鋒を務めているのは、長年、プーチンの汚れ仕事を担ってきたチェチェンの傭兵部隊です。金によって働きを変える部隊が先頭に立っていること自体、軍のレベルの低さを象徴しています」

 他方のウクライナは、

「NATOから武器支援を受けている上に、防衛戦とあって士気も高い」(ユーラシア21研究所の吹浦忠正理事長)

 ウクライナ戦力はロシアに比べ、兵員数で4分の1、戦闘機は10分の1、戦車の数も5分の1と圧倒的な開きがあるが、それにしては大善戦といえるのである。

週刊新潮 2022年3月17日号掲載

特集「『プーチン』破滅へ」より

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