「親米大統領」誕生でも韓国は「離米従中」 李朝末期にどんどん似てきた

  • ブックマーク

Advertisement

報復政治に終止符を打てるか

 尹錫悦次期大統領が直面する問題は外交だけではない。報復政治に終止符を打てるかが内政最大の課題だ。韓国では前政権の大統領を牢屋に送るのが定番化した。

 恒例通りに文在寅氏やその側近も裁判にかけられる可能性が高い。尹錫悦氏は2月7日、中央日報のインタビューで「執権すれば、前政権の積弊を清算するための捜査をするのか」と聞かれ「せねばならない、せねばならない。為されねばならない」とはっきりと答えた。

 2月15日、国会に議席を持たない保守政党の自由民主党が中央日報に意見広告を載せた。文在寅大統領の在任中の“罪状”を列挙したうえ「これら利敵的行為は死刑に値する」と宣告した。

「大統領選挙で落選したら監獄行き」という新たな慣例が加わる雲行きでもある。当選した尹錫悦氏の陣営も、落選した「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏の陣営も、大統領になったら相手を裁判にかけると公言していた。

 この異様な候補者同士の対立は、個人の間の怨恨だけが原因ではない。文在寅政権下では大統領に加え、保守政権で登用された官僚、裁判官、軍人が裁判にかけられ投獄された。自殺した元高官も多い。

左派は死に物狂いで抵抗

 朝鮮日報・楊相勲(ヤン・サンフン)主筆の「懲役合計100年 『積弊士禍』の陰の理由」(2018年3月22日、韓国語版)によると、文在寅政権が始まって1年もたたない2018年3月の段階で保守政権時代の官僚ら110人が起訴、60人弱が拘束された。長官・次官級だけで11人が収監された。

 文在寅大統領にすれば、盟友だった盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の弔い合戦だった。李明博(イ・ミョンバク)政権になるや、退任したばかりの盧武鉉氏は検察の捜査を受け自殺に追い込まれた。保守と左派の報復合戦は激化する一方なのだ。

 1月22日、李在明氏が遊説で「負ければ無実の罪で刑務所にいくことになる」と語った。世論調査でやや不利な予測が出た時だったので同情票を集めようとしたか、あるいは本人も覚悟を固めたと見なされた。

 尹錫悦氏が政権を握った以上、文在寅派も李在明派も刑務所に行かないために死に物狂いで抵抗することになる。野党第1党になる「共に民主党」は国会で300議席中、過半数の172議席を確保している(欠員5議席)。法案の否決も可能なうえ、左派系無所属議員らを糾合して議席の6割を確保すれば、大統領弾劾も決議できる。

 韓国では「内乱直前の状況だ。左右対立の激化で再び国が滅ぶ」と嘆く声が出ている。「再び」というのは、党争――指導層の激しい内部抗争の末に滅んだ李氏朝鮮が念頭にある。

次ページ:人口減少による衰退

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。