ドイツがメルケル首相だったらプーチンのウクライナ侵攻は防げた

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 ロシアによるウクライナ侵攻が続いている。既存の国際秩序を破壊したロシアを懲らしめるため、バイデン米大統領は厳しい制裁を科しているが、これにより西側諸国も経済的な打撃を受けるのは必至な情勢だ。

 国際社会が大混乱の様相を示している状況下でトランプ前大統領は「自分が大統領ならウクライナ侵攻は起きなかった」と主張しているが、筆者は「ドイツがメルケル首相だったらこの惨事は防げたのではないか」との思いを禁じ得ないでいる。

 長期にわたりドイツの首相を務めたメルケル氏は昨年12月に政界を引退したが、ロシアとウクライナの間の関係を安定化させる最も重要な取り決めである「ミンスク合意」の生みの親だった。

鈍かった調停者

 2015年2月に成立したミンスク合意は単なる停戦協定ではなく、「ウクライナ東部の親ロシア派支配地域に幅広い自治権を認める特別な地位を与える」という取り決めが含まれていたことから、ウクライナは当初から不満を抱き、その履行を渋っていた。

 2014年にウクライナに親米政権が誕生して以来、米国は3000億円にも上る軍事支援を行ってきた。これによりウクライナは欧州地域有数の軍事大国に成長し、東部地域の軍事バランスも政府軍が優勢になったことから、ゼレンスキー大統領は昨年1月「ミンスク合意を履行しない」と宣言した。

 これに対し、ロシアは「ウクライナがミンスク合意を破棄して武力解決を試みようとしている」と警戒、昨年3月からウクライナ国境沿いに軍を増派して圧力をかけていた。

 ロシアの一連の動きは、欧州に対して「ウクライナがミンスク合意を履行するよう促してほしい」とのメッセージだった可能性が高いが、調停者であるドイツやフランスの反応が鈍かったと言わざるを得ない。

 ようやく事の重大さに気づいたフランスとドイツの首脳は今年2月に入り、ロシアとの交渉に積極的に乗り出したが、「時既に遅し」だった。メルケル首相だったらもっと早いタイミングでモスクワに飛び、プーチン大統領に対し「ミンスク合意がロシアにとっても最も有利な選択肢である」ことを説得し、ウクライナやその背後にいる米国には強く自制を求めていたに違いない。

 マクロン大統領はメルケル氏に代わってロシアとの交渉を精力的に行ったものの、ミンスク合意成立時の当事者ではない。その後、ウクライナ東部の戦闘がむしろ激化したことから、ロシアは「ミンスク合意に頼っていては親ロシア系住民の安全を守れない」と判断した可能性が高い。

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