2年間で集めた「バカ感染対策」集 食べずに見守る流しそうめん、運動会で2メートルのバトン(中川淳一郎)

  • ブックマーク

Advertisement

 もう、この世の中「感染対策」と称しておけば何をやっても高く評価される状況のようですね。立憲民主党の長妻昭議員が国会で「公共交通機関での不織布マスク推進」を提言し、斉藤鉄夫国交相が鉄道事業者に働きかけると答弁。世界がマスクを外している中、日本はコレ。長妻さんこそ公衆衛生の鑑です。ヨッ、大統領! あと、2歳児へのマスクも「推奨」されました。今や日本では「推奨」は「強制」です。さっそく各保育園では2歳児のマスク着用が始まりました。

 この前見たニュースでは、大阪の保育園の素晴らしい対策が紹介されていました。子供たちにマスクを着用させるのは当然、食事中もマスクを着けたり外したり、床に正座して椅子に食事を並べて「黙食」する。職員が適宜デジカメで園児を撮影するとともに、16台の監視カメラを駆使して園児がどのタイミングで濃厚接触者になったかや、マスクをしているかなどをチェック。そしてここの理事長がドヤ顔で感染対策を誇るわけですよ。あ~、良かった~、こんな馬鹿な国に子孫を残さなくて本当に清々しい!

 さて、先日、このバカげた2年間の「感染対策」を振り返る資料を作っていたのですが、ザッと挙げます。エレベーターのボタンは第2関節で押す/第2関節でも危ないため、爪楊枝や綿棒をエレベーター内に設置し、ボタンにはこれらを使い必ず捨てる/電車の吊革にひっかける自分専用のフック使用/運動会では「組まない組体操」/修学旅行は学校で密になって現地ガイドのプレゼンを見る「リモート修学旅行」/トイレのハンドドライヤー使用中止で手を洗わない人続出/運動会のリレーは2メートルのバトンを使用/授業参観で保護者は廊下に台を置き、上方の小窓から見る/美術館ではビニール傘を使いソーシャルディスタンス維持/巨大観音様にマスク/マスクをしていても笑顔の顔が分かる「鼻から下の写真が載った名刺」/透明な提灯型パーテーションに個々人が入る「提灯会食」。

 中でも秀逸だったのが、コンビニに貼られた「不要不急の大便は自粛願います」の貼り紙です。そして私が「キングオブバカ感染対策」に認定するのが「食べずに見守る流しそうめん」。

 上記の数々の対策で見事なオチがついたのが「2メートルのバトン」です。嘘しか報道しないことを社是としているサイト「虚構新聞」が、2020年9月12日に〈2mのロングバトンも コロナ禍で「新しい運動会」 マキャベリ小〉という記事を掲載。すると同月27日、なんと相模原の小学校で2メートルのバトンを使う運動会が本当に行われてしまい、虚構新聞はお詫び記事を掲載するに至りました。

 もしかしたら相模原の小学校の教師は安心・安全な運動会のありようを探るべくネットを見ていて虚構新聞の記事にたどり着き、「これだ!」と思ったのかもしれません。虚構新聞のURLはkyoko-np.netのため、一瞬「京都新聞かな」と見紛うのもトラップです。

 虚構新聞に釣られてこの競技をやったのならまだしも、2メートルのバトンを本気で考えて実施した教師がいるのだとしたら、日本の教育は馬鹿製造装置といえましょう。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2022年3月3日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。