「すき家」「はま寿司」のゼンショーが始めた新コンビニ 「さくらみくら便利店」のナゾに迫る

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

Advertisement

特筆すべき「食」の豊富さ

 そこで、コンビニ業界に詳しいマーケティングアナリストの渡辺広明氏とともに店舗に足を運んでみた。

 訪れたのは今年1月20日にオープンしたばかりの「さくらみくら便利店 館林瀬戸谷店」。東京都内からは館林ICで降りて10分ほどの距離にある。1号店の「笠懸阿左美店」、「伊勢崎境上渕名店」、「太田下浜田店」に続く4つ目の店舗だ。

 県道沿いのこちらの店舗は、20台以上の駐車スペースを備える大型店。店外にはオープンテラス式のスペースも用意されている。

 店内に入ると、まず「みくら食堂」と書かれた赤い暖簾が目に飛び込んでくる。さくらみくら便利店の最大の売りといえそうな「店内調理のできたて弁当」だ。

「ローソンでも半数を超える店舗で店内調理の弁当を販売する「まちかど厨房」を展開しています。こちらは基本的に作ったものを売り場に並べて販売するのに対し、さくらみくら便利店は、レジ横の機械で注文を受けてから作り始め、番号で呼び出されたうえで受け取る仕組み。弁当チェーンに近いですね」(渡辺氏)

 メニューは「みくら唐揚げ弁当/醤油」(470円)や「大きなハンバーグ弁当/デミグラス」(500円)ほか、「ふんわり卵の親子丼」(480円)、「ふっくら香ばしい鰻丼」(650円)といった丼もの、さらには「とろけるお肉の欧風カレー」(550円)をはじめとするカレーが4種、「出汁染みるたぬきうどん」(290円)「家系ほうれん草ラーメン」(590円)「明太子バターの和風パスタ」(450円)といった麺類まで30種類以上がラインナップされている。

 この「みくら食堂」とは別に、売り場には「若鶏の照焼きごはん」(322円)や「白身フライにこだわったのり弁当」(398円)など、いわゆる“コンビニ弁当”も用意されている。

 多くの種類を揃えたうえで需要を探る新規店ならではの事情があるとはいえ、取材時にはパスタ、デザート類をふくめて40種類以上が並べられていた。製造者は群馬県内にある企業。わずか4店舗の「さくらみくら便利店」のためにこれだけの種類を作っているのであれば、単なる“実験”の域を超える力の入れようだ。

「レジ脇のホットスナックに、きなこ・ココア・シュガーの『揚げパン』(128円)が売られているのも、コンビニではあまり見かけない光景です。『カレーパン』(148円)をまとめ買いしていたお客さまもいましたから、地域にはもうファンが定着しているのかも。本社が群馬県にあったコンビニの『セーブオン』はローソンに業態転換し、消滅しました。そこを突き、北海道の方が『セイコーマート』を誇りに思うように、地域に根差す存在を目指すのかもしれませんね」(渡辺氏)

 一方、お菓子や飲料、日用品の棚には、メーカー製造のナショナルブランドの商品が並び、ファミリーマートの「ファミマル」のようなプライベートブランドは皆無。群馬県の太田市にある老舗「新田パン」の販売コーナーが一部にある以外、ご当地感を出そうという意図も感じられない。冷凍品の棚に「すき家」の牛丼はあるものの、ゼンショーブランドを推すつもりもないようだ。

次ページ:“同質疲れ”の需要?

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。