最安値はタダ、おつりは50銭札…3月で閉店、面白過ぎる「激安メガネ店主」が語る“次の戦略”

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黄色いハンカチ

 老眼めがね博物館では、激安商品を扱っているだけではない。

「高級なべっ甲のメガネも取り揃えています。200万円するものを49万円で売っています。150万円のものは、43万円ですね。今はこの半額で買えます。なぜこんなに安いかというと中古品だからです。医者などお金持ちが亡くなった後、残されたべっ甲メガネを買い取り、それをべっ甲屋に持って行ってきれいに再生させるのです。九州や秋田、青森など遠方から買いに来るお客さんもいますよ。先日は静岡からタクシーに乗って来られた方もいました」

 武井さんは神奈川県横浜市出身。高校卒業後、地元の信用金庫に就職した。営業で色んな店を見て歩くうちに、商品の並び方でその店が繁盛しているか分かるようになり、商売に興味を持った。1971年に信用金庫を辞め、池袋で雑貨の問屋を始めた。26歳の時だった。

「問屋を始めたのは、元手がかからないからです。極端な話、メーカーから商品をひとつ仕入れ、それを小売りに見せて注文を取ればいいんですからね」

 雑貨を全国のデパートや百貨店に卸した。30年前からメガネを主に扱うようになった。売上は多い時で月に5000万円を超えたこともあったという。

「ところが20年前から、卸業が細ってきました。100均ショップのダイソーは自社で色んな商品を開発しているし、ホームセンターのカインズは、売上の4割が自社製品です。スーパーも独自の商品を作るようになりました。問屋を通さずに売って、利益を上げようというわけですね。問屋街の馬喰町はゴーストタウンになりました。それで10年前から同じ場所で小売りを始めたのです」

 ところが、コロナ禍でお客が店に足を運ばなくなった。

「この建物の大家が、建て替えたいと言うので、閉店することにしたのです。在庫は約12万本ありましたが、半額セールで半分ほど売れましたよ」

 閉店後、武井さんは引退するのだろうか。

「いいえ、次のお店を考えています。山手線沿線に新しくメガネ店を出す予定です。電車の中から店が見えるようにビルの3階に構えようと思っています。店名は『黄色いハンカチ』です。電車が通ると、窓を少し開けて、従業員に黄色いハンカチを振らせるのです。目立つでしょう。あれは何だと思い、行ってみようか、ってことになると考えています(笑)」

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