沖縄「17歳失明事故」の背景 若者の間で流行する「スクーター族」vs.「警察」の因縁

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ちびかめ

 もちろん、カメラマンが目撃したスクーター部隊が、今回事故に遭った少年だったわけではない。だが、沖縄にはこうした暴走行為を手助けするスクーターが多く、警察は「暴走族」と同じ括りで見ているというのだ。

 沖縄の暴走族を20年以上も取材してきたジャーナリストの岩橋健一郎氏によれば、彼らは「ちびかめ」と呼ばれているという。

「方言からそう呼ぶらしいのですが、黒づくめの格好でスクーターに二人乗りしています。全盛期の90年代は、沖縄に60から70チーム、1000人くらいの暴走族が存在しました。しかし法律が厳しくなり、いまは十数台あるかくらいです。その代わりに増えたのが『ちびかめ』。警察と暴走族のチェイスになると、彼らがその間に入って援護するのです」

 流行の背景には、オートバイの価格高騰化がある。

「本土から三段シートが装備された旧車を取り寄せるとなると、部品も含めて100万円以上はします。中学校を卒業したばかりの子供が免許取るのに30万、そのうえで本格的な族車なんて難しい。100cc前後で二人乗りも可能なスクーターを乗り回すのです。値段も手頃。小回りもよくて機動力がある」(同・岩橋氏)

「第二のコザ暴動」

 ただ、警察から見れば彼らも同じ暴走族で、取り締まりの対象なのだという。

「ただでさえ、沖縄の暴走族はかなり過激です。本土だと、大勢で連ねて走って、警察が来たら逃げるというスタイルですが、沖縄はまったく違う。大抵、集合場所のような交差点が決まっていて、そこで一人ひとりが警察に挑発して、一対一のバトルを楽しむのです。その追いかけっこを支援するのがちびかめです」(同・岩橋氏)

 ちびかめに限らず、暴走族を応援するギャラリーは多いという。背景には、沖縄独特の価値観があると岩橋氏は分析する。

「彼らの父や祖父の代から、『反権力』の精神を受け継いでいる。戦争中、本土からやってきた軍隊は、米兵が上陸してくると市民を見捨てて逃げた。“お上”に対する不信感が沖縄人のDNAにはあるのでしょう。沖縄警察署の暴動が起きた背景にも、きっとそれがあったと思います」(同・岩橋氏)

 前出のカメラマンによれば、現地の人々のなかには今回の騒動を「第二のコザ暴動」と呼ぶ人もいるという。1970年、アメリカ施政の圧政に不満を募らせた沖縄人数千人が、米軍車両に放火したり琉球警察の派出所に投石したりした暴動事件である。

「今回も機動隊が鎮圧しようとすればできたはずですが、巡査の対応に非があると考えて、警察はされるがままにしたのではないか」(カメラマン)

 今後、暴徒と化した若者たちは器物損壊などの容疑で捜査されるというが、その前に欠かせないのが、失明事故の真相究明だ。果たして、巡査の警棒使用は正当だったのか。県警は一刻も早く調査結果を公表すべきだろう。

デイリー新潮編集部

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