風俗勤務がやめられない「有名国立大」のエリート研究員 四十路を越え、振り返る半生

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“大人のパーティー”を主催している知人から「コンパニオンの女の子に、学校の先生がいるんですよ」と連絡をもらった。性風俗でアルバイトをしている教師というのは珍しくないから、私は始め驚きもしなかった。が、よくよく聞けば単なる“先生”ではないという。誰もが知る有名国立大学で研究員をしているというのだ。【酒井あゆみ/ノンフィクション作家】

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 その大人のパーティーは、月に一度ほどのペースで、マンションの一室で行われている。表向きは「性行為が好きな男女が集まる」というフレコミだが、実際のところ、女性のほうは主催者からギャラをもらっている玄人が大半だ。取り分はひとりを相手するたびに4000円ときわめて安く、しかもまともな店では雇ってもらえない女性がたどり着く「墓場」のようなところだ。そんなところに超エリートが働いているというのだから、興味をそそられ、知人を介して取材を申し込んだ。

 インタビュー現場に現れた由紀子(仮名)は、いま44歳。すらりとした長身の女性だった。事前に、例の主催者から胸をはだけた彼女の写真を見せてもらっており、そちらはなかなかグラマラスだったから、イメージと違った。脱いだらすごい……というタイプだ。

 念のため、在籍する学校の身分証明書を見せてもらうと、たしかに聞いていた通りの所属だった。専門分野を聞いたが、それが理系だということだけは分かるのだが、門外漢の私には何の研究なのかはよくわからない。「特定されたくないので詳しくは書かないでください」と言われたので、ここでは仮に数学系としておこう。

 しかもよくよく聞けば、研究員になる前には海外で日本語学校の講師を務め、数学の教師として働いていた時期もあったそうだ。しかも地方の老舗ホテルの1人娘である。幼い頃に母を亡くしたというから、父から溺愛されていたことは想像に難くない。学生時代は「お金は天から降ってくるものだと思っていた」というくらいの仕送りをもらっていた。いまもお金に困っている素振りはなく(月収30万円だといっていた)、たしかに若くはないが、彼女ならばもっと条件のいい店で働くこともできるはず。ますます、なぜ、墓場のようなパーティーで働いているのかが分からない。

「怖いもの見たさ、それか、自分を落とし入れて虐げる快楽、なのですかね……。ホスト狂?違います。そういう子がいることは知っていますが、なんで高い男にお金払わないといけないの?って思っちゃうくらいです」

 1000人に1人の確率で、いわゆる「好き者」は存在するといわれるが、30年近くこの業界にいる私でも、その手の女性には2、3人しか会ったことはない。彼女も「違います」と断言する。

「地元にいた高校生のときにテレクラで出会った男性と初体験は済ませました。上京して大学に入ってからもテレクラを利用して、色んな男の人とも寝てきました。およそ10店の風俗店でも働いてきましたが……そういう行為が本当に好きになったのは、40歳を越えて、今の彼氏と出会ってからですから」

 自分でも、なぜ働いているのかは上手く説明できないらしい。小さい頃は「ガリ勉キャラ」で、友人関係や職場でも、下ネタは一切、口にしない人間として過ごしてきたそうだ。自分が望んだというよりは、勝手にそうレッテルを貼られていた節がある。「高校生の時、教室で安野モヨコさんの『ハッピー・マニア』を読んでいたら、“そんなもの読むなんて”と友人に言われたのを覚えています」。性的なことへの関心は「パパが買っていたスポーツ紙を盗み見て」小さい頃からあったそうだが、そんなことはよくある話。研究職をしながら性風俗の仕事をしているのは、由紀子本人がいう「怖いもの見たさ」という理由が、今のところ一応しっくりくるものだろうか。

「詳しい学歴をお客さんに伝えたことはありませんが、“頭の良い女性”をどうこうしたい、という欲望がある男性は一定数いるので、そういった方の受けはいいですね」

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