トランプの“悪だくみ”が招く米国内戦の恐怖 大統領復帰のために州務長官を抑える?

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リベラル派と保守派の内戦

 このような企みについて「根拠のない選挙不正を訴える人間が州務長官に就けば、米国の選挙制度自体の存続が危ぶまれる」との懸念が出ているが、もしこのようなトリックでトランプ氏が再選されたらどうなるのか。

 前述のシュナイダー氏は「トリックで大統領が決まれば、米国は内戦に陥り、現在の形で存在することが不可能となる」と警鐘を鳴らしている。

 不倶戴天の仇敵とも言うべきトランプ氏が策を弄して政権に復帰する事態は、リベラル派にとって悪夢以外の何ものでもない。「トランプ派とは別の地域・国に住みたい」との声が沸騰し、かつての南部諸州のように連邦から離脱する動きが出るかもしれない。

 社会の分断に歯止めがかからない中、米国では暴力を容認する声が強まっている。3人に1人の米国人が「民主主義を守るための政府に対する暴力は正当化できる」と考えている(1月7日付ビジネスインサイダージャパン)。

 このような風潮を反映して、リベラル派と保守派の間で内戦が起こる可能性を論じた書籍が今年に入り何冊も出版され、話題を呼んでいる。人口よりも銃の数が多く、リベラル派と保守派が激しく憎悪し合う米国で、新たな内戦は全くの「空想」ではなくなっている。

 日本では今年11月の中間選挙に注目が集まっているが、真に警戒すべきは次回の大統領選挙を早くも警戒する米国の深刻な民主主義の現状だ。米国をあてにできない世界がついに来てしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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