「マスクをしない人、ワクチン非接種者が悪い」論法はおかしい? 感染者増減の理由ははっきりせず(中川淳一郎)

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 先日、茨城県出身の男性と飲んでいたのですが、弊社社員・Y嬢が彼にこうツッコミを入れていました。「なんで茨城の空港って国外向けの愛称に『東京』を付けようとしたの? 無理あり過ぎでしょうよ」。

 はい、英語では「Tokyo Ibaraki International Airport」で、中国語では「東京茨城國際機場」で、明らかに「東京」を名乗ろうとしていました(反対を受け中止)。「茨城だって東京の一部である!」「成田空港だって『新東京国際空港』じゃないか!」という理屈を言い出しそうですが、新加勢大周か!

 この手の話になると千葉県浦安市にある東京ディズニーランドが引き合いに出されます。浦安だったらまぁ、江戸川区の隣なのでそこまで違和感はないですが、茨城空港はさすがにキツい。

 とまぁ、こういうバカ話で酒を飲んでいたのですが、Y嬢が再び地名に関する疑問を持ち出し、我々は再び盛り上がるのでした。

「地図帳の最後に47都道府県のデータがあったけど、そこに県庁所在地も書かれてあるじゃん。なんで東京だけ『東京』なの? ヘンじゃない? 『東京市』なんてないでしょ? 本来『新宿』と書くべきじゃないの?」

 これにも我々は「確かに」と言ったのですが、Y嬢の追及は終わらない。

「大阪の府庁は大阪市中央区にあるけど、こちらは『大阪市』で整合は付いている。でも、東京の『東京』は納得できない!」

 これも「確かに」としか言いようがないのですが、こうした細かいことに対して疑問を抱く人というのは頭が良いのでしょうね。漫画「美味しんぼ」では、主人公の山岡士郎が宿敵・海原雄山から「ポン酢の『ポン』とは何だ?」と問いかけられ、それに答えられなかったことで「グヌヌヌヌ」と悔しがるシーンがありますが、海原雄山もよくそんな質問が思いつくものです。

 そう考えるとさまざまな疑問が出てきて、童謡「山寺の和尚さん」の歌詞も気になる点が非常に多い。和尚さんがネコを「かん袋」とやらに詰め込んで蹴っ飛ばしたらネコがニャンと鳴く、といった歌詞があります。これってただの動物虐待でしょうよ! しかも鞠を蹴りたい欲求があったけど鞠がないからネコを代わりにしてしまうって、和尚さん、あなた一応聖職者でしょうよ! そして謎の「かん袋」ですが、どうやら「紙袋」のことだそうです。

 とまぁ、この世の中は不思議なことに満ち溢れていますが、コロナですよ。もう騒動開始から3年目に入りましたが、どの専門家も陽性者が増えた時は理由として「気が緩みマスクを外す瞬間があった」「年末年始で会食の機会が増えた」「酒で気持ちが高まり大声で喋った」「帰省で人流が増えた」とかいろいろ言えますが、減った時は「マスクをピタッと着けた」とか「気が引き締まった」など根性論ばかり。挙句の果てには「不自然な減り方だ……」なんて分析を投げ出す人もいる。

 そもそも約80%がワクチンを2発打ち、都市部では99%超がマスクをしているのになんで陽性者の増減があるんですか? そろそろ「マスクをしない人間が悪い」「ワクチン非接種者が悪い」論法、破綻してませんかね。どうせ誰も答えられないんだろうけど。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

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