”白いロマンスカー”は引退も… 効率だけじゃない「小田急電鉄」の哲学

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小田急の代名詞

 もともとロマンスカーの名称は小田急の専売特許ではなかった。二人が並んで座れる座席をロマンスシートと呼び、映画館や劇場でも用いられていた。ロマンスシートを配置した車両がロマンスカーと呼ばれ、過去には京成電鉄や東武鉄道、京阪電鉄などでもロマンスカーが運行されてきた。

 多くの鉄道事業者は経営の観点から経済効率を重視する。それに従えば、ロマンスシートよりも一度に多くの利用客を乗せることができるロングシート車両が増えていくのは時代の流れといえる。同時に特急にも各駅停車にも使用できる、汎用性のある車両が好まれていく。

 こうして鉄道各社からロマンスカーは姿を消す。それでも小田急だけは頑なに新型のロマンスカーを開発・登場させてきた。こうした流れから、ロマンスカーは小田急の代名詞にもなっていった。

 小田急がロマンスカーにこだわりを見せたのは、沿線に箱根という人気観光地を抱えていることも一因にある。観光需要があるから、特急を走らせることができるのだ。しかし、バブル崩壊後に小田急も観光用からビジネス用へとターゲットをシフトさせた。

 VSEの一代前に登場したEXEは、ロマンスカーの特徴でもある全面展望を廃止。それが、VSEで華麗に復活した。

 VSEは、小田急の新たな顔として脚光を浴びた。小田急が経済効率性へと傾斜せずに特急列車の開発に力を入れるのは、前述したように箱根という一大観光地があるからだが、そのほかにも小田急独自の社風・哲学という要因があったことは否めない。

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