ふわふわで甘い「高級食パン」ブームに翳り 半年と持たず閉店する店舗も

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メーカー関係者は「高級食パン」をどう見ているのか

 そもそも高級食パンとは何なのか。さる大手パンメーカーの関係者は「あくまで一般論ですが」と断ったうえで、次のように語る。

「基本的には、我々がスーパーなどで販売する食パンに比べて“ふわふわで甘い”というのが高級食パンの最大の売りです。ただし大半が、特別に良い原材料を使っているわけではありません。甘さも、バターや生クリーム、ハチミツを多く混ぜ込んで作っているんです。まるで菓子パンのように感じられる商品もありますね」

 製法にも特徴があるようだ。

「普通の食パンは『中種法(なかだねほう)』という方法で、簡単に言うと生地をきちんと発酵させて作ります。そのぶん発酵時間をとらねばならず、生地を置いておく場所も必要なのですが、この製法ならば時間が経っても硬くなりにくく、日持ちするパンができます。対して高級食パン店は、大半が『ストレート法』という方法で作っています。こちらは発酵時間が短くて済み、それだけに省スペースの店舗でも大量生産しやすい利点がありますが、美味しさのピークは作った当日で、次の日には味が落ちる。また、焼くとあまり美味しくなく、“生”で食べるのを推奨している店が多いのもそれが理由です。我々のようなパンメーカーは日持ちしない商品を作るわけにはいかないので、高級食パン店のやり方は真似しづらいですね」

ブームありきのビジネス、ただし新機軸も

 マーケティングアナリストの渡辺広明氏は、高級食パンをめぐる現状について次のように分析している。

「結局のところ、高級食パンは価格と価値が一致していなかったという点に尽きるのではないでしょうか。閉業が相次いでいるとのことですが、そもそも営業する側も、長くビジネスをする気はなかったのではないかと思います。高級な食パンという目新しい商品で話題を集め、ブームありきで利益を出す、そうしたビジネスモデルなのではないでしょうか。ただ、ベーカリー業界では、堀江貴文氏が発案したエンタメパン屋『小麦の奴隷』が店舗を増やしているほか、高級食パンと共にフルーツサンドを推す新規店なども見受けられます。“近所のパン屋さん以外”という購買の選択肢は、定着したように思いますね」

デイリー新潮編集部

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