「発達障害」「うつ」の原因にもなる「腸漏れ」とは? 有害物の脳への“漏れ”を防ぐ食事術

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腸内細菌を移植すると

 17年に発表された、アリゾナ州立大学による腸内細菌移植の臨床研究を紹介しよう。被験者として7歳から16歳までのASDの子供18人が集められた。被験者全員が慢性の下痢、腹痛、便秘といった腸の障害を持つ。この被験者にMTT(腸内微生物移植)を受けてもらった。

 腸内に存在する細菌を2週間かけて取り除いた後、健康な人から採取した腸内細菌を被験者に移植したのだ。腸内細菌の移植は、ある子供は浣腸によって、また、ある子供は高濃度細菌を含んだ微生物ドリンクを飲んでもらった(どちらも同じく有効)。全体で18週間に及ぶ臨床試験である。結果は驚異的なものだった。

 被験者18人中、16人は腸の症状が80%も改善したのだ。と同時に、ASDの症状も著しく改善していた。関係者でさえ予測できなかった素晴らしい結果であった。だが、それが長続きするのか。2年後の追跡調査では、結果はこうなった。改善した16人のASD症状は、2年後でも58%の改善状態を維持していた。

 データのひとつを紹介しよう(図2)。

 では、2年後のASD症状はどうだったか。臨床試験開始時には、83%が「重度」であったが、2年後には「重度」17%、「軽度/中程度」39%、「ベースライン以下」44%に改善した。2年後の子供たちのASD症状は臨床試験開始時にくらべ、大幅に改善したことが明らかとなった。

 アリゾナ州立大学のグループによるMTTの結果はすばらしいが、研究はまだ始まったばかりであり、MTTがクリニックで治療に用いられるわけではない。FDA(米食品医薬品局)で認可されるには、より多くの患者を対象に有効性と安全性を調べる試験が求められる。現在、できるだけ迅速にFDAから承認を得、実用化するために、米フィンチ製薬は、ASDの子供を対象に第2相臨床試験の準備を進めている。

 一方、日本の取り組みは遅れていて、民間団体の腸内フローラ移植臨床研究会と提携している医療機関が、17年から腸内細菌の移植によるASDの治療を開始したが、大学病院レベルでは、筆者の知る限り、まだ行われていない。

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