【カムカム】物語を読み解く最大のキーワード「ひなたの道を歩く」の意味

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 NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が放送開始から3カ月目に入った。昨年11月1日からの「安子編」に続き、同12月23日の第39話から始まった「るい編」も2月には終わる。観る側の心を奪うこの朝ドラの魅力をあらためて考える。

 素振りや仕草で自分を10代のるいに見せている深津絵里(49)ら出演陣の演技も出色だが、最大の魅力はやはり藤本有紀さん(54)の脚本にほかならない。無駄がない。

 上白石萌音(23)がヒロインを演じた安子編の第28話、第30話、第32話に登場した岡山の戦災孤児が、大阪のトランペッター・大月錠一郎(オダギリジョー、45)だったのは既に知られている通り。第48話で分かった。

 戦災孤児の登場は終戦直後という時代を表現するためと思っていたが、そうではなかった。今はるいにとって大切な人である

 1940年だった第8話で安子と稔(松村北斗、26)が観た映画「棗黍之丞」も意味があった。単に戦前のデート風景を描写した訳ではなかった。

 棗黍之丞役のモモケンこと桃山剣之介(5代目尾上菊之助、44)が劇中で口にする「暗闇でしか見えぬものがある」という決めセリフがキーワードだった。

 時は流れ、1963年になった第53回、るいは錠一郎と「棗黍之丞シリーズ第21弾 妖術七変化 隠れ里の決闘」を観に行く。決めゼリフは同じ。普遍的な意味を持つ言葉だと藤本さんが考えているからだろう。この言葉によって錠一郞は自信を取り戻す。

 肉親の愛を知らずに育った錠一郎はトランペットの音色に暗さがある。だからジャズ通のラジオパーソナリティー・磯村吟(浜村淳、87)は錠一郞を「闇夜に浮かぶ月」と表現した。
 一方、ライバルで親友のトミー北沢(早乙女太一、30)は「光り輝く太陽」と表された。両親がクラシック音楽の演奏家で、何不自由なく育ち、幼いころから英才教育を受けたからだ。

 錠一郞は引け目を感じていた。だから、関西ナンバーワンのトランペッターを決める「関西ジャズトランペッターニューセッション」への出場も当初はためらった。

 出ることを決心してからも不安だった。自分にはトランペットが全て。敗れたら何も残らないと思い込んでいた。傷つくことを怖れた。

 そんな時に聞いたセリフが「暗闇でしか見えぬものがある」。そう、艱難辛苦を乗り越えた人間にだけ分かることがある。辛酸を舐めないと見えないものがある。錠一郞の顔に生気が戻った。この言葉は錠一郞にだけ当てはまるものではないはずだ。

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