経済力の学力格差を乗り越える「読書」の力とは 「経済格差」「遺伝」より「本のある環境」が影響

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読解力、学力の歴然とした格差

 今回のような教育改革に対しては、懸念を示す専門家も少なくない。だが、なぜこのような改革が必要になったかといえば、難解な文学作品どころか、ちょっとした通知事項などの実用文さえもきちんと理解できない生徒たちが増えているからなのだ。いわゆる読解力が十分に身に付かないままに義務教育を終えている。

 そうした生徒には、格調の高い小説や評論を学ばせている場合ではない、何よりも必要なのは実用文を読解できるようにさせることだ。そうでないと社会に出てから困ることになる。実際、実用文を理解できないためにさまざまなトラブルが生じている。そういった現実を無視するわけにはいかない。そう言われれば、納得せざるを得ない部分もあるだろう。

 そこで、国語の授業で自治体の広報や契約書など実用文の読み方を学ばせようということになったわけだ。従来の国語の授業を受けて育った者からしたら、実用文の読み方を学ぶ国語の授業など想像しがたいのだが、それを必要とする生徒たちが目の前にたくさんいるという現実がある。

 そのような生徒たちは、教科書を読んでも、文章をきちんと読解できないため、書かれている内容を理解できない。当然のことながら、先生の解説も理解できない。こうしたことが現実に起こっているわけである。もちろん教科書や先生の解説を十分に理解できる生徒たちもいるわけで、そこに読解力、そして学力の歴然とした格差が存在する。

読み聞かせの効果

 こうしてみると学力格差の大きな要因として読解力の問題があるといってよいだろう。であるなら、読解力を高めることができれば学力格差の問題を乗り越えられる可能性が見えてくる。そのカギを握るのが読書だ。

 読書によって知的発達が促進されるというのはしばしば指摘されることであり、実際、読書によって語彙力が高まることは、心理学や教育学の多くの研究により示されている。読書量と語彙力の関係については多くの調査研究が行われているが、幼児期から児童期の子どもを対象とした研究を見ても、中学生や高校生を対象とした研究を見ても、大学生や大学院生を対象とした研究を見ても、どの年代でも一貫して読書量の多い者ほど語彙力が高いといった傾向が示されている。

 2歳前後の幼児の場合は、自分で読書することはできない。その場合は、本をよく読むかどうかというより、読み聞かせをよくしてもらっているかどうかが問題となる。読み聞かせの効果に関しても、多くの研究が行われている。そうした研究により、読み聞かせを始めた時期が早いほど、また読み聞かせの頻度が高いほど、語彙力が高いことが明らかになっている。

 このように、独力による読書であっても、読み聞かせによる間接的な読書であっても、読書経験が語彙力を高めることは科学的に実証されている。

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