岸田首相を待ち受ける3つの壁 参院選後に揉めそうな党役員人事の肝

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選挙改革、そして人事の壁

 2つ目の壁は、選挙制度改革である。最高裁が違憲状態と判断した「1票の格差」を是正するため、政府の「衆議院議員選挙区画定審議会」が6月までに岸田首相に新たな区割り改定案を勧告する。2016年に成立した衆議院選挙制度改革関連法に基づき、「10増10減」となる制度改革の期限を迎えるのだ。

 定数が減少する10県には、岸田派ナンバー2の林芳正外相と自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の領袖である安倍晋三元首相の地元・山口県も含まれ、両者の選挙区がバッティングする可能性もささやかれる。「自民党公認争いが生じて、次期衆院選で首相に近い林氏を優遇することになれば、安倍派が倒閣に走りかねない」(自民党関係者)といわれるほど不穏な空気が漂う。林外相も「ポスト岸田」候補の一人であり、首相にとっては頭痛の種だ。

 そして、最後の壁となるのは自民党役員人事である。岸田首相は昨年9月の党総裁選への出馬に際し、当時の二階俊博幹事長が5年超在任している点を批判。党役員は「1期1年、連続3期まで」とする党改革を宣言した。麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長との連携を深める一方、タカ派色の濃い高市早苗政調会長とは距離があり、参院選後の役員人事で交代するのは既定路線とみられている。

 ただ、高市氏を外せば「後見人」である安倍元首相とのすきま風は避けられない。福田達夫総務会長の交代も「若手を重用する党改革の象徴人事」(自民党ベテラン議員)だっただけに改革後退とのイメージもつきまとう。首相は就任100日目の回顧で2度の「組閣」を例示するほど苦慮したことをうかがわせたが、次の人事は政権の命運を左右しかねないものになるだろう。

 岸田派には「参院選で勝利すれば長期政権が見えてくる。2つ目、3つ目の壁だって、求心力が高ければアンチは静かになり正面突破できる。いよいよ岸田カラーを前面に出す年になる」(中堅)と楽観視する向きもある。「寅」は決断力と才知の象徴ともされるが、岸田首相は今年どのような決断を見せていくのだろうか。

小倉健一(おぐら・けんいち)
イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒。国会議員秘書からプレジデント社入社。プレジデント編集長を経て2021年7月に独立。

デイリー新潮編集部

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