「漫才ってアニメにはならないんですよ」 ハライチ岩井が『ワンオペJOKER』の宮川サトシと熱く語り合う

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「漫才」はアニメにできない

岩井:『ティラミス』では状況設定もですが、笑いの作り方も秀逸ですよね。というのは、『ムムリン』よりも以前から、アニメの原作のお仕事の依頼を受けることがあるのですが、キャラクターを「ボケ」と「ツッコミ」に分かりやすくわけた、「漫才」をベースにしたような設定でと頼まれることが多く、ほとんどお断りしています。僕としては、漫才とアニメの相性ってあんまり良くないと感じているので。

 そもそも、お笑い芸人でもなく普通に生きている登場人物たちが、日常生活で頻繁にツッコむことに違和感があるんです。わざとらしさが透けて見えるというか……。もちろん、お笑い好きの一般の方もいますが、正直そういう人たちの会話って、ずっと聞いていると少し疲れますよね(笑)。だから、キャラがボケてもボケっぱなしで、むしろ真剣にボケている人がおかしな状況に巻き込まれたときのリアクションで笑わせる『ティラミス』は、本当にすごいなと思いました。

宮川:(隣にいる担当編集者に)ねぇ、ちゃんと聞いてました!? 笑いのプロの方にそう言って頂けるなんて……。ツッコミのことで言えば、読者は読みながら心の中でツッコむだろうと僕は考えているので、さらに「ガイダンス的なツッコミ」が入るとやっぱりちょっとうるさいから、ツッコむよりも、もう一つ面白い要素を入れたいなと常に思っています。

岩井:そう考えると、ボケとツッコミで成り立つお笑い文化が日本にいかに浸透しているか、ということでもありますね。読者の大多数にツッコミの素養があるという前提には、意外に気がつきませんでした。

コックピットで串カツ?

岩井:状況設定に話を戻しますが、『ティラミス』は宇宙空間でロボットに乗って戦うという壮大なSFを舞台にしながら、各話のストーリーは日常のめちゃめちゃ小さいことに重きを置いていますよね。第1話からそうで、主人公のスバルが出撃直前に神妙な表情で何をするのかと思ったら、コックピットで揚げたての串カツを食べようとした上、ソースをつけ損ねて飛び散ったカツの衣を、「コックピットが油で汚れるのは避けたい!」って必死に片付けようとするだけで終わるという……。

宮川:我ながら、「宇宙」でやる必要ないと思います(笑)。

岩井:ファンタジーの世界で敢えてファンタジーを「無駄使い」することで、描かれる普通の日常が抜群に面白くなる――宮川さんの状況作りの巧みさはとても参考になります。

宮川:めちゃくちゃ嬉しいです! けど、僕ばっかり褒めて頂いちゃってすみません。日常をどう描くか、ということで言えば、岩井さんのエッセイ集は1冊目の『僕の人生には事件が起きない』から、いち読者として楽しく読ませて頂いていました。最新作『どうやら僕の日常生活はまちがっている』ではエッセイだけでなく、「小説 僕の人生には事件が起きない」も収録されていましたね。

岩井:あれって、担当編集者に「今作では小説を書いて下さい」って言われたんで書いただけなんです(笑)。

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