烏丸せつこが主演作のプロデューサーに手厳しい批判 「この映画には気持ち悪いところがいっぱい」

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決定的に間違い

 烏丸の厳しい指摘はほぼ全編に及ぶが、とくに矛先が向けられたのは、後半のワンシーン。過去に夫婦生活を求めて拒絶された美智子が、当時の三郎の冷たい振る舞いをなじる場面だ。

「押し入れに隠してあった夫のエッチな本を盗み見していたとか、それで覚悟を決めて誘ったのに応えてくれなかった、だから死のうと思ったとか。そんな女、いるかっての。だから監督に“仮にそういうことがあるとしても、もうちょっとセリフを何とかしようよ”って言ったんだけど、向こうは“はい、考えておきます”って言ったきり。どうせ寺脇に“烏丸さんがこんなことを言ってますけど”って知らせに行って、寺脇が“いやいや”とか“まあまあ”って宥(なだ)めていたんでしょ。そうやって、なし崩し的におかしなセリフを押し付けて来るんだから」

 怒りの直言はなおも続く。

「本来なら、ラスト近くで家路についた美智子と三郎が、長い道のりをトボトボと歩いていくシーンが入るはずだった。情感と余韻に富んでいる本当に素晴らしい場面だったのに、なぜだかこれも全部カットされちゃったのよ」

 烏丸の映画作りにかける思いはことのほか強い。

「作品の解釈は、お客さんの性別や年齢によって変わるもの。それぞれが余韻に浸りながら“この夫婦はどうなるんだろう?”って考えるの。それこそがこの作品がタイトルに掲げた問いかけなわけでしょ? それを“こんな結末になっちゃった”って見せるのは決定的に間違いなのよ。だから寺脇には聞いてみたい。あまりに映画的ではない演出じゃないの? これで本当にいいの?って」

 ベテラン女優が振るう愛のムチを一身に受けた、当の寺脇氏は何と答えるか。

「500万円に満たない低予算映画なので、至らない点が多かったことは事実なんです。実際、撮影中に笑いながらでしたが“あんたでしょ、一番悪いのは”とか“あたし、怒ってんのよ”と言われましたからね。でも、烏丸さんは若い頃からずけずけと物を言うタイプで、一時は毒舌女優なんて呼ばれていましたよね。だから、今回もシャレの部分があると思う。だって、初日の舞台挨拶にも“もちろん、出るわよ”と快諾して下さったんですから」

 そう言いつつも、「近いうちに烏丸さんと一席設けて“あなたは一体、なんなんだ?”って叱られてきます」と、頭を掻くのだった。

週刊新潮 2021年12月30日・2022年1月6日号掲載

ワイド特集「『人間研究』寅の巻」より

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