千葉真一を国民的スターにした「キイハンター」秘話 俳優・谷 隼人×女優・大川栄子

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 2021年に歿した人物の中でも世界的に知られていたといえば、アクションスター千葉真一ではないか。彼を一躍有名にしたのがドラマ「キイハンター」である。レギュラー出演していた谷隼人さんと大川栄子さんが、千葉をしのびながら当時の思い出を語った。

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 2021年8月19日、俳優の千葉真一が新型コロナウイルス感染による肺炎でこの世を去った。その千葉の人気を不動にした全262話のアクションドラマがある。高度経済成長期末期の1968年から73年に放送された「キイハンター」だ。最盛期には視聴率は30%を超えた。

 キイハンターとは平和を脅かす犯罪から日本を守る、国際警察直属の秘密捜査グループ。レギュラーメンバーは、丹波哲郎演じる“ボス”黒木鉄也を筆頭に、野際陽子(津川啓子)、谷隼人(島竜彦)、大川栄子(谷口ユミ)、千葉(風間洋介)の5人。60話から川口浩(吹雪一郎)も加わった。

 テレビが一家に1台の時代。モノクロからカラーへの移行期で、土曜日の夜8時はTBS系にチャンネルを回し、家族そろって「8時だョ!全員集合」を見て、9時からの「キイハンター」を見るのが、当時の日本の家庭のスタンダード。

 あれから約50年。川口、丹波、野際が亡くなり、千葉への追悼の思いも込め、谷と大川に「キイハンター」撮影当時のこと、在りし日のメンバーのことを語ってもらった。

ナイフが刺さって救急車で運ばれたことも

――谷さんと大川さんが会うのはいつ以来でしょうか。

谷 隼人(以下・谷) 19年11月の千葉真一さんの芸能生活60周年記念パーティー以来かな。

大川栄子(以下・大川) そう。同じテーブルだったわね。千人くらい集まったのかな。あまり俳優はいなくて、私たちは「キイハンター」のテーマ曲「非情のライセンス」で登場した。

 千葉さんにとっても「キイハンター」は大切な番組だったんだね。

大川 あの曲を聴くと、私、今でも胸がキュンとする。20代前半の多感な5年間が「キイハンター」とともにあったから。

――近くで見る千葉さんのアクションはいかがでした。

大川 それはもうすごかった。石川県の山でロケをした回があって、千葉さんと私が参加したんです。私はたいがいドジを踏んで悪者にとらえられる役回りで、千葉さんが救いに来る。屋根の上から転がり落ちるシーンで、千葉さんはスタントマンも命綱もなしでやっていました。爆破シーンで私は顔が真っ黒になった。山岳ロケの時は、お風呂なんかないんですよ。スタッフがドラム缶にお湯を入れてくれて、野際さんと交替で浸かりました。

 五右衛門風呂よりももっと原始的だね。

大川 格闘シーンでは、悪役の俳優さんのナイフが千葉さんに刺さって、救急車で運ばれたこともあったわ。

 千葉さんは身体能力が高いうえにアイデアマンでもあった。さまざまな工夫をしていました。ボクサーや空手家を見るとわかるように、本当の殴り合いは動きが小さい。しかし、立ち回りでは見栄えがいいように、振りは大きく見せて動きます。でも、それだけではリアリティに欠ける。千葉さんは、振りの中に直線的で、カウンターを使う速い動きを取り入れ、リアルに見せていました。僕はそんな千葉さんの背中を見て頑張りました。

大川 立ち回りでの肉体表現は素晴らしかったね。

 立ち回りは大きくて派手だけど、相手に飛び込む時の動きは、猫のようにしなやか。着地も静か。日体大の体操部出身でオリンピックの日本代表候補だったからこその身のこなしでした。

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