国民は大統領選の両候補に失望、外交は視界絶不良… 2022年の韓国を占う

国際 韓国・北朝鮮

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日韓息詰まり、米韓不信、南北断絶、中韓従属

 韓国外交と経済も展望は明るくない。日韓関係は打開策が見つからない。日本の政府関係者は、いくら会談をしても息が詰まるような感じに辟易している。尹候補の大統領当選がない限り、関係改善は無理だ。

 米韓関係は、駐韓米大使が任命されないまま1年近くも放置されている。同盟国に対し、あまりにも冷たい対応だ。大使候補者の名前すら上がっていない。大統領が任命してから米議会での承認まで最低でも3カ月はかかるから、今年の前半までに新しい米大使が赴任する可能性はない。

 明らかにアメリカは韓国を重要視していない。バイデン政権は、文在寅大統領に不信感を抱いており、韓国の大統領選挙(3月9日)が終わるまで、新大使の任命はないと言われる。

 なぜバイデン政権は、文大統領を信頼しないのか。まず、バイデン大統領は自身が日韓の慰安婦問題解決を仲介した経験から、文大統領の対日姿勢に不満だ。また、中国の習近平主席に傾斜する姿勢に、不信感を抱いている。

 このため、2月の北京五輪にどのような対応をするかを注視している。文大統領は、北京五輪の「外交ボイコットはしない」と述べており、北京五輪に参席する意向だ。金正恩(キム・ジョンウン)総書記か実妹の金与正(キム・ヨジョン)氏と北京で会談したい意向を、なお捨てていない。この姿勢に、バイデン政権は不満だ。

 文大統領は5月に任期を終えるが、これまで歴史的な成果は何もない。国内では不動産価格が激高し、失政を非難される。歴史的成果として、南北首脳会談の再開と朝鮮戦争終戦宣言に熱意を傾けるが、北朝鮮と米国は乗り気でない。

 南北関係は、金総書記が文大統領にすっかり不信感を抱き、首脳会談に応じる気は全くない。2019年の米朝首脳会談前に、文大統領は「寧辺(ニョンビョン)の核施設閉鎖だけで米国は満足する」と金総書記にアドバイスした。

 ところが首脳会談で、トランプ米大統領(当時)は「寧辺だけではダメだ」と応じなかった。金総書記のメンツは丸潰れで、「文在寅に騙された」と怒っている。その後の文在寅政権の北朝鮮政策にも不信感を深め、応じるつもりはない。ただ、3月の大統領選挙で保守野党の尹錫悦候補の当選は望んでおらず、左派与党の継続を望むが、李在明候補も信用していない。南北首脳の信頼は、回復しそうもない。

 韓国はミサイルの射程距離制限が解除されてから、兵器開発に力を入れている。その結果、潜水艦建設やロケット開発も進み、北朝鮮は神経を尖らせており、南北の武器競争が激しくなる。

 文在寅政権は中国の言いなりで、北朝鮮よりも独自外交ができない。中国の圧力を受けると譲歩してしまう。歴史的に中国の侵略を何度も受け、冊封体制に組み込まれていたから事情は理解できるが、米中対立の中でどちらにつくのか選択を迫られる。韓国内には、将来は中国がアメリカを凌駕するとの見解も根強く、中国に傾斜しがちだ。

重村智計(しげむら・としみつ)
1945年生まれ。早稲田大学卒、毎日新聞社にてソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員を歴任。拓殖大学、早稲田大学教授を経て、現在、東京通信大学教授。早稲田大学名誉教授。朝鮮報道と研究の第一人者で、日本の朝鮮半島報道を変えた。著書に『外交敗北』(講談社)、『日朝韓、「虚言と幻想の帝国の解放」』(秀和システム)、『絶望の文在寅、孤独の金正恩』(ワニブックPLUS)など多数。

デイリー新潮編集部

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