フジテレビ早期退職 “50歳で特別加算金は1億円”の厚遇でも社員は納得しない理由

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 フジテレビが1月から50歳以上の早期退職希望者を募集する。在京キー局では異例のことだ。かつて“楽しくなければテレビじゃない”をキャッチフレーズに年間視聴率3冠王の座に君臨したフジだが、近年は民放4位が定位置となり、テレビ東京に追われる立場だ。フジ社内は今、どうなっているのか。

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 早期退職者の募集は「ネクストキャリア支援希望退職制度」と名付けられている。対象者は、満50歳以上、かつ勤続10年以上の社員。優遇措置として、通常の退職金に加え特別優遇加算金を支給。さらに、希望者には再就職支援を実施するというものだ。

 金光修社長(67)は「高齢社員が多く若手社員が少ない逆ピラミッド型の人員構成。未来を見据えバランスを取る」と説明している。同社関係者は言う。

「たしかに今のままでは、バランスが非常に悪い。フジは社員1400人強の会社ですが、その中に今回の対象となる50歳以上が500人弱ほどいるんです」

 なぜそんなことになったのか。

「フジが初めて年間視聴率3冠王(ゴールデン、プライム、全日でトップ)を取ったのは82年でした。前年に『オレたちひょうきん族』や『北の国から』が始まり、この年から『笑っていいとも!』がスタートしました。以来、93年まで12年連続で3冠王を獲得し、バブル期と共に“楽しくなければテレビじゃない”を地で行く勢いがありました。その頃は、新卒で70人くらい採用したこともありました」

 30年あまりが過ぎ、当時の新卒社員も50代になったというわけだ。

「現在の新卒採用は30人弱ですから、当然、ベテラン社員の割合が高くなってきたわけです」

 それはずいぶん前からわかっていたはず。構造改革をするには少々遅すぎたのでは?

逆ピラミッドの二段重ね

「94年に年間3冠王を日本テレビに奪われましたが、フジは04年にそれを奪い返し、10年まで7年連続で3冠王の座を守りました。03年に公開された劇場版『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』が実写日本映画の興行収入新記録を打ち立てるなど、まだ勢いがあったんです」

 フジの3冠王は今のところ、それが最後となっている。前記の通り、今や民放4位が定位置だ。

「実は4年前の17年にも、早期退職者を募集したことがあるんです。その時は50歳の場合、特別加算金は7000万円ほどでした。10人弱が応じたそうです。今回は50歳の希望者の場合、特別加算金が1億円と言われています。59歳の特別加算金が2千数百万円といいますから、かなりの厚遇と言っていいでしょう。まだ正式な募集前ですが、ほとんどの対象者が面接済みで、迷っている人も多いと聞きます。定年後も働くつもりでも、今度は関連会社からの派遣になる。それを考えたら、再就職の支援までしてくれるわけですからね。今回の募集は、すぐに埋まってしまうかもしれません。もっとも、早期退職募集が発表される直前に退社してしまった人も数人いるのですが、彼らは高額な特別加算金を手に入れられなかったわけです。今ごろ悔やんでいるでしょうね」

 そこまでやってもフジの未来は明るくないという。

「逆ピラミッドの上に、さらなる逆ピラミッドが残っているからです。フジテレビ、及びFMHを兼任する役員には、フジテレビ創業期の社員がゴロゴロいるんです」

 かつてフジが勢いを失った頃、日枝久元会長(83)が“老害”と報じられたのは有名だが、すでに会長は辞したはずだ。

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