2027年に韓国の1人当たり名目GDPは日本を上回るという試算は本当か

国際 韓国・北朝鮮

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深刻なデフレの可能性

 経済成長を牽引する生産年齢人口も2019年から減少に転じている。韓国のベビーブーム世代(1955~1963年産まれ)が2020年から高齢者(65歳以上)になり始めており、韓国の潜在成長率が今後大幅に低下していくことが確実視されている。

 少子化も深刻だ。2020年の韓国の合計特殊出生率は0.84(日本は1.34)となり、世界最下位だ。ソウル市の2020年の出生数は20年前に比べ64%以上も減少した。

 韓国の総人口も2021年から減少する。韓国統計庁は12月に入り「今年の総人口は昨年(2020年)から9万1000人減少して5174万5000人になる」との予測を出した。2年前は「総人口の減少は2029年頃に始まる」と見込まれていたが、これが8年前倒しになる。2009年から人口減少が始まった日本と同様、韓国経済もこれから深刻な需要不足(デフレ)に陥る可能性が高い。

 韓国の高齢者貧困率がOECD加盟国の中で最も高い(43.4%)という「不都合な真実」もある。社会保障制度を整備しないで経済成長を追求してきた長年の「ツケ」が韓国経済に重くのしかかってくることは間違いない。

「韓国経済の方は勢いがある」との論調が日本でも当たり前になりつつあるが、人口動態からは「韓国経済がこれから大変なスランプとなる」ことが容易に予想できる。

 外交関係ばかりがクローズアップされているが、韓国経済の急変に対してもしっかりと備えておくべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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