人材流出で技術が中国、韓国に漏洩…「日本製半導体」が凋落した理由とは

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技術の高度化で活路を

 つまり、これから日本はTSMCの持つ「微細化技術」ではなく、「3DIC(3次元集積化)」を用い、半導体チップを縦に重ね合わせた「積層化技術」による技術の高度化で活路を開いていくというのだ。

 瀬戸際の経産省も言う。

「“通産省と経産省がアホだった”と言って頂いて構わない。我々も反省しているのですが、日本では半導体がなぜ必要なのかが国民に伝わらないといけなかった。半導体産業を守るのではなく、デジタル化で日本が生きていくために半導体は極めて大事で、国民によるコンセンサスが必要なんです」(前出・西川氏)

 だが、それでも一部には、「日本の得意技である半導体材料・装置の技術情報が流出し、再び海外勢に振り回されることになるのでは」と懸念する声も根強い。

 いずれにせよ、現在の日本の半導体は、もはや待ったなしの状況を迎えた。

 確かに日本には、経済安全保障上の国家戦略では製造拠点作りと新技術開発は重要である。しかし、同時にいまは海外勢と互角以上に戦える情報能力、優秀な日本人技術者を厚遇できる企業意識の深化、そして明治維新の渋沢栄一のように多大な社会インフラを構築するリーダーの登場が何より大事な時期なのだ。

山村明義(やまむらあきよし)
ジャーナリスト。1960年熊本県生まれ。金融業界誌などを経て、政治・行政・科学を中心のテーマとするジャーナリスト。最近では半導体を含む「日本のものづくり」をテーマに執筆活動を行う。『財務省人事が日本を決める』(徳間書店)など著書多数。

週刊新潮 2021年12月23日号掲載

特集「厳冬に給湯器が壊れても替えがない 『家電』『ゲーム機』『自動車』もピンチ “生活の危機”を招いた『半導体不足』の真因」より

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