人材流出で技術が中国、韓国に漏洩…「日本製半導体」が凋落した理由とは

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好待遇の韓国、中国にヘッドハントされ…

 その陰には、日本人技術者たちの半導体技術情報の提供があった。当時、構造不況に陥ったメーカーでは、雇用形態や人事制度も変化した。そこで日本の半導体業界でもリストラや賃金カットが行われると、日本人技術者のヘッドハントによる海外流出が相次いだのだ。

「韓国の一流企業クラスだと、(日本人技術者の年俸は)3千万円から4千万円になる。多くは3年契約で、所得税は5年間無税。中には1年目は4千万だけど、2年目は3千万円、3年目は無報酬というケースもあり、中国はお金と女で報酬は日本の数倍だけど、本当にお金を持って帰れるかどうかわからないリスクもあった。それでも日本人技術者は海外へ行ったわけです」(藤井氏)

 一方、当時の日本人技術者の平均年収は、特別な手当もなく、製造業としての全国一律型の賃金制度の上に、40代で450万円程度。これでは勝負にならない。

土帰月来のアルバイト

 ある元大手メーカーの半導体技術者もこう認めた。

「90年代中頃から多くの日本人技術者が毎週末、韓国や台湾へ“土帰月来”と呼ばれるアルバイトで日本の半導体技術を教えに出向いた。私はそこで知り合ったサムスン電子の幹部から提示された税抜き2年契約の毎年更新、年間3千万円という条件でヘッドハントされました。当時会社からは給与の2割カットを言い渡されていたので、思い切って会社を辞めて2年だけソウルに行きましたが、日本は外国に比べて情報管理もまったく厳しくなかった。私自身、多くの日本人技術者が日本の半導体コア技術の情報を韓国に漏らすのを実際にこの目で見ました」

 挽回策の一手として日本半導体業界は2000年代の初め頃から、「日の丸半導体株式会社」を旗揚げした。

 99年に設立されたエルピーダメモリ(以後エルピーダ)と、2003年にスタートしたルネサスエレクトロニクス(当時はルネサステクノロジ)の2社である。

 とくにエルピーダは、日立とNECを中心に、三菱電機も加わり、「日の丸半導体」を背負う存在として期待された。ところが当初のDRAMの市場シェアは2%程度と低迷。そこで日体大を卒業し、米テキサス・インスツルメンツ日本法人出身の坂本幸雄氏が02年、新社長に起用され、約10年間エルピーダの経営面を担った。

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