麻布、開成…中高一貫校でコロナ世代に起こった“奇跡”とは オンライン文化祭などで見せた驚異の適応力

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コロナ禍を逆手にとって

 豊島岡(としまがおか)女子学園中学校・高等学校(以下、豊島岡)では、中3の4人が中心となって、コロナ禍でも楽しめる学年イベントを企画した。それが「クラス対抗運針リレー」だ。

 豊島岡には、毎朝5分間、真っ白い布に赤い糸をただひたすら縫っていく「運針」の時間がある。この5分間だけは学校中が静寂に包まれる。裁縫学校としての生い立ちがある豊島岡の名物だ。それを競技にしてしまったのだ。

 毎朝使う運針用の白い布は約1メートルだが、これを何枚もつなぎ合わせ、1クラス47人が15秒間ずつリレー形式で縫い、どれだけ長く縫えたかを競う。優勝チームの記録は7メートル48センチだった。

 豊島岡は合唱コンクールの強豪校でもある。コロナ禍で中学合唱コンクールは中止になったが、代わりに生徒たちが発案したのは、ボディーパーカッションによる合奏のクラス対抗大会だった。見事な発想の転換である。

「(コロナ禍を通して)慣例となっていたものに対して『なぜ?』とか『その必要はあるのか?』などと考える姿勢が顕著になった」(小美野貴博教諭)

運動会をYouTube配信

 開成中学校・高等学校の教育は運動会に始まり、運動会に終わるといわれている。しかし2020年、開成は大運動会中止という苦渋の決断を下した。その悔しさをバネに21年は、YouTubeライブを利用して、東京オリンピックさながらのライブ実況中継放送に挑戦した。生徒たちは各教室のモニターで、保護者は自宅から、実況中継を楽しむことができた。密を避けるだけでなく、これまでの運動会にはなかったプラスアルファの楽しみ方を考案したのだ。

「普段はグラウンドの混雑によってじっくりと観戦できないことが多かったが、撮影された映像はたいへん見やすく、好評でした」(宮利政教諭)

 武蔵高等学校中学校(以下、武蔵)では、ドイツ、オーストリア、フランス、中国、韓国の高校生たちとのオンライン交流会が2度開かれた。

 もともと武蔵には、1980年代から続く国外研修制度がある。中3から始まる第二外国語の授業で、優秀な成績を修めた生徒たち約15人が高2の終わりから高3の初めにかけての約2カ月間、前記の国におもむいて現地の提携校で授業を受けることができる制度だ。コロナ禍で海外渡航ができなくなってしまったため、それならと、武蔵の生徒たちが中心となって世界各地の提携校を結びつけたのだ。

「いま、新生武蔵として『世界をつなげる』を掲げています。まさにその体現でした」(小池保則教諭)

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