跋扈する「コピペ裁判官」たち “NHK受診料”の誤記もそのまま判決文に、のお粗末

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裁判官同士の回し合い?

 一般に裁判官は判決文を書く際、似たような前例がないかを調べ、主に最高裁判例を参考にして判決文を書くことが多い。いわば「前例主義」が中心だ。昔は分厚い『判例体系』や『判例時報』などを調べ、それを咀嚼した上で、担当した訴訟に当てはめて自分の文章にしていた。しかし技術的にコピペができるようになり、手抜きができる。司法関係者は司法修習同期などの繋がりも強く、裁判官同士で「ひな形」を作っておいて適当に回すことも可能だ。 

 コピペ裁判官に危機感を持つのが元裁判官の井戸謙一弁護士(滋賀県弁護士会)だ。「裁判官が右から左に流すように処理してしまえば、司法への国民の信頼が根底から裏切られる」と指摘する。井戸氏は裁判官時代、北陸電力志賀原発の運転差し止め判決を行い、弁護士になってからも原発反対運動に取り組んだり、滋賀県の湖東記念病院の元看護助手、西山美香さんの冤罪事件では緻密な弁護活動で西山さんの「患者殺し」の汚名を晴らした。

 一方、「判決文をコピペすることなんてできるんでしょうか?」と首をかしげながらも「あまりにも便利な世の中になってしまい、やってしまったんか」と話すのは、2014年に福井地裁の裁判長として大飯原発3・4号機の運転差し止め判決を下した樋口英明氏(退官)である。

「準備書面では訴えている側の主張とかは、その部分は変わらないので、それをコピペしてそれから判決文を書くということはある。しかし、同種の裁判が行われているといって担当している裁判官同士が融通し合わなければできないのではないか。親しい裁判官同士で回し合ってるのでしょうか。原発でも多くの訴訟がありますが、裁判官の間でそんなネットワークはありませんでした。不思議です。判決文を書く時、最高裁判例なども参考になるときは一字一字、引き写して書くことはありますが、その場合は書きながら考えている。コピペになってしまえばただの機械作業になってしまい、考えることもしなくなる」と憂える。

 埼玉県に住む元検察官の弁護士は「知り合いの裁判官 同士で『おい、お前、どうする』なんてやっていると聞く。裁判官ネットワーク でも十分あり得ますよ」と話す。「判決文そのものは紙に印刷したものだけを当事者に渡す。押印が必要ですからパソコン上と言うわけにはいかない。しかし裁判官は現在、昔のように手書きなどではなくパソコンで判決文を書く。類似の訴訟を受け持った仲のいい裁判官同士が元データを送ってもらったりすることは十分できる」と話す。

 印刷物の判決文でも入手さえできれば、「読み取りソフト」の利用で自分のパソコンに取り込んでしまうことができる。「コピペ」は人脈的にも技術的にも可能なのである。

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