「朴槿恵に恩赦」で文在寅へ巻き起こった大ブーイング 次期大統領が「保守でもリベラルでも監獄行き」と言われる理由

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1年以内に監獄へ

 コメントに出てきた“セウォル号”とは言うまでもなく2014年4月に沈没事故を起こした船舶のことだ(乗員・乗客の死者299人、行方不明者5人、捜索作業員の死者8人)。

 事故当時、大統領だった朴氏には「空白の7時間」があり、事故発生直後の午前10時頃から午後5時過ぎに中央災難対策本部に姿を現すまでの行動が一切明らかになっていない。これが国民の朴政権不信に火をつけ、“ろうそくクーデター”が起こり、文政権が生まれたという経緯がある。

 大統領着任後に繰り出された政策は失政の連続との評価がもっぱらで、ろうそく集会でひとつになったはずの支持者の心情は散り散りになっている。

 次期政権を敵対する保守の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長が担うことになれば、文大統領は早々に監獄送りにされると指摘されている。それだけではなく、リベラルの李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事が政権を握っても「文大統領は1年以内に監獄へ」と言われているほどなのだ。

 李在明氏は、今回の恩赦を一種の政治問題として見る姿勢を示した。恩赦決定を受けて発表した声明では、「文大統領の決定を尊重するが、国民に対し心からの謝罪が必要だ」「恩赦・復権問題は刑事・司法的問題であるが、国民の判断と歴史的判断はそれとは関係なくそのまま存在する」と述べている。

予備選で敗れた恨みつらみ

 この声明は、同じ与党「共に民主党」に所属する立場ながら、文大統領との差別化を図っていると見られる。2人は手を携えて今回の大統領選に臨んでいるように見えても、前回の大統領予備選で文氏に敗北した李氏の恨みつらみは決して消えることがないとも噂される。

 つまり同じリベラル陣営の李氏が大統領に就任したとしても、世論や自身の支持率を見ながら、韓国で繰り返されてきた「前大統領の逮捕・長期収監カード」を切ってくる可能性は捨てきれないのだ。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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