バイデン政権は高インフレで早くもダメ出しされる可能性 カーター政権の悪夢が甦る

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 米与党・民主党のマンチン上院議員は12月19日、バイデン大統領の看板政策である子育て支援や気候変動対策などを盛り込んだ1兆7500億ドル規模の大型歳出法案に「賛成票を投ずることはできない」と表明した。議会上院では与野党が拮抗しているため、民主党から一票でも「造反」が出れば、「ビルド・バック・ベター(より良い再建)」と名付けられたこの法案は可決できなくなる。

 バイデン大統領は就任1年を前に支持率の低迷に悩んでいる。就任当初56%だった支持率が41%まで急落しており、この法案が成立しないとバイデン大統領は就任1年目で早くも「失敗」の烙印を押される可能性が高いと言われている。

 戦後の米大統領で「ひどい失敗」という烙印を押されたことで有名なのはジミー・カーター氏(在任時期は1977~81年)だ。カーター氏と言えば、1980年4月のイランでの米国人人質救出作戦の失敗が思い浮かぶ。

 バイデン大統領の躓きの石も今年8月末に実施されたアフガニスタンからの秩序ある撤退に失敗したことだった。「イラン人質事件の失敗」という悪夢が呼び覚まされた米国では「バイデン大統領は現代のジミー・カーターではないか」との声が広がった。カーター氏にとって人質救出作戦の失敗はたしかに痛手だったが、それ以上に彼の再選を阻んだのは当時の米国経済の低迷(高インフレ)だった。

 1970年代後半の米国経済は、「不況にもかかわらず物価が継続的に上昇する」という経済状況(スタグフレーション)に陥っていた。商品価格が継続的に上昇すると見ていた当時の米国人はより多くの商品を購入したことで追加の需要が発生し、これが価格を押し上げ、人々はさらに商品の購入に走るという悪循環に陥っていた。カーター大統領は政府支出を増やすことによって不況から脱しようとしたが、このことがかえってインフレを激化させ、事態のさらなる悪化を招いてしまった。

 前述のマンチン議員がバイデン大統領の肝いりの法案に反対する理由として「インフレへの懸念」に言及したように、現在の米国もインフレに対する懸念が強まっている。

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