日大のドンは「脱税」のみで捜査終結 私大ガバナンス改革に抵抗する人の正体

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田中被告は「逃げ切った」か

 日本大学の病院建て替えを巡る金銭授受事件は、理事だった井ノ口忠男被告が背任で起訴された一方、理事長だった田中英寿被告は「脱税」での起訴にとどまり、捜査はこれで終結する見込みだ。

 日大から業務を受注する業者から「お祝い」などの名目で多額の金銭を受け取っていても、理事長としての「職権濫用」の責任は問われず、所得を申告していなかったという罪だけが問われるという幕引きになりそうだ。日大は田中被告との「永久決別」を宣言しているが、逆にいえば、この事件は田中被告「個人の問題」だと言っているに等しい。これで日大の体質は変わるのか。

「背任事件は組織に損失を与える明確な意図があったことを明らかにしなければならず、立件が難しいのは確かです」と語るのは、大手新聞のベテラン司法記者だ。

「特捜部はとにかく田中を有罪にすることを優先して、背任には目をつぶる代わりに本人に脱税を認めさせたのでしょう。よくあるバーターですが、これまで理事長として権勢を振るい、散々、金銭疑惑がかけられてきた田中からすれば、『逃げ切った』ということではないでしょうか」

 捜査関係者から「疑惑のデパート」と呼ばれた田中被告の「本丸」に迫ることができなかったのだ。

「任意の聴取の段階で田中は『俺を逮捕すれば、カネの配り先をすべて暴露する』とうそぶいたと報じられていましたが、背任事件としてカネの流れを追及していけば政治家や官僚などの名前も出てくる可能性があったと見られています。検察が脱税のみで幕引きしたのをみると、田中被告の恫喝が効いたということかもしれません」

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