日大のドンは「脱税」のみで捜査終結 私大ガバナンス改革に抵抗する人の正体

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第二第三の田中被告

 もっとも、井ノ口被告が、理事長の「威を借りて」勝手に金銭を受け取っていたという話を世の中は信じるのだろうか。別の私立大学の事務局長は言う。

「大学など学校法人は理事長ひとりに権限が集中する制度になっています。いくら腹心が権限を握っても、理事長が知らないところで工事発注などを決めることは、まず無理でしょう。理事長が事細かに指示していなくても、理事は逐次、報告していたと思います。井ノ口被告が勝手に行うのはどう考えてもありえません」

 絶対的な権限は田中被告にあったはずだ。問題は田中被告という個人もさることながら、大学の仕組みにあるという。事務局長氏が続ける。

「圧倒的な権限を握る理事長が暴走を始めた時、それに歯止めをかけられる仕組みがないのが今の学校法人なんです。例えば公益財団法人などでは、評議員会が理事の選解任権を持っています。ところが学校法人の評議員会は理事会の『諮問機関』という位置付けで、意見を聞けば良い。しかも、評議員には理事が兼務して加わることもできますし、幹部職員が入ることもできます。評議員会は会社で言えば、『シャンシャン総会(質疑応答や議論などがなく、形式的に短時間で終了する総会)』みたいなもので、何の歯止めもかけられません。田中前理事長と決別したとしても、第二第三の田中被告が出てくる仕組みです。特に理事長独裁のカルチャーが染み込んでいる日大は、そう簡単には変われないのではないでしょうか」

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