安倍元総理の「台湾有事は日本有事」発言に中国は激怒 林外相への“甘い囁き”の真意は

国際 中国

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日本政府の真意を探ろうとする中国

 中国情勢に詳しい拓殖大学の富坂聰教授によれば、

「中国共産党には“台湾を統一しなければ完全な中国になり得ない”との一貫した考えがあります。近代化を推し進める軍事力は、そのすべてが台湾に向けられていると言っても過言ではありません。米国はあくまでも台湾の背後に控える厄介な存在という位置付けです。それゆえ、中国は安倍元総理の台湾発言に“レッドラインに触れた”とばかりに激怒したわけです」

 だが、その一方で、

「中国が安倍元総理の発言の真意を見極めようとしているのも事実。つまり、台湾有事の際、日本が本当に自国民の血が流れることを厭(いと)わない覚悟なのか慎重に値踏みしている。日本との間合いを計りつつ、次の一手を練るため、水面下で神経戦を繰り広げている状況といえます」(同)

 中国側の策謀はそれだけに留まらない。

 11月11日に日中友好議連の会長職を辞任した林芳正外相は、その1週間後に行われた中国・王毅外相との電話会談で訪中を打診されたと明かした。親中派とされる林外相への“甘い囁き”は臆測を呼んだが、

「親中派の議員は、むしろ中国寄りの言動には慎重になるため、林さんが外相に就任したことで中国はやりづらさを感じているのではないか。今回の訪中打診も日中関係の改善といった企みを秘めているとは考えづらい。林さんを“観測気球”に使ってモーションをかけ、岸田政権や日本の世論がどんな反応を示すか試したのだと思います」(同)

 北京五輪を前に世界中から厳しい視線を浴びる中国。その焦りと深謀の双方を見極め、毅然とした態度を示すことが肝要となる。

週刊新潮 2021年12月16日号掲載

特集「『放映権料136億円』失っても譲らない『WTA』が満天下に示した『習近平』の御し方」より

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