韓国大統領選で与党候補が「『産婦人科』は日帝の残滓」と主張 それでも韓国世論が冷静なワケ

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福沢諭吉の訳語も

 半島情勢に詳しい東京通信大学の重村智計教授は、「私も韓国に留学したり特派員として勤務したりする中で、韓国語化した日本語をたくさん知りました」と言う。

「意味も発音も日本語と同じなのは、例えば『コンセントの差し込み口』の『差し込み』や、『冷やかし客』の『冷やかし』です。韓国語で発音する日本語由来の単語となると、もう数え切れないほどです。特に西欧思想を表す専門用語は、日本語をそのまま使いました。その背景として、李氏朝鮮が儒教を重んじたため西欧思想を排斥したことが挙げられます。それが韓国語の学術用語に日本語由来が多い理由のひとつです」

 1910年に日韓併合が行われ、韓国総督府は義務教育や高等教育にも力を入れた。その際、福沢諭吉(1835~1901)が翻訳した「経済」「社会」「権利」といった単語も、そのまま韓国にもたらされた。「産婦人科」が俎上に載せられたのも、医学上の専門用語であることと無縁ではないだろう。

「韓国では、反日が話題となっている時は自由に物が言えません。反日的な言説に異論を唱えたことが公になれば、ネット上で叩かれたり、左翼から嫌がらせを受けたりする可能性があるからです。李候補の『産婦人科』に関する発言に違和感を覚える韓国人は少なくないでしょう。それでも異論や反論が表立って出ないのは、反日的な文脈の言説なので、下手に触れると火傷してしまうからです」(同・重村氏)

外交政策に変化?

 ただし、異論や反論が出ていないという事実は重要だという。それが「産婦人科の語源が日本由来かなどどうでもいい」という意思表示につながるからだ。

「一方の尹候補は、11月12日に外国メディアと記者会見を行った際、『文政権になって韓日関係が壊れた』と批判しました。更に、未来志向の日韓関係を樹立するとも発言しました。反日の文脈とは正反対ですが、韓国の世論は静観しています。こちらの場合は、批判しないことで尹候補の考えに賛成したと考えるべきでしょう」(同・重村氏)

 与党である左派にとっては、反日の気運を盛り上げることが大統領選に勝利する可能性を高める。しかし、そのような仕掛を色々と行っているものの、韓国世論の反応は乏しいという。

「11月16日には警察庁長官が竹島に上陸しましたが、やはり韓国世論は冷静でした。何とかして盛り上げたいと反日の材料を探しても、ネタが尽きてきたのかもしれません。産婦人科という名称に噛みついてもインパクトがなかったようで、こちらも韓国の世論はそれほど反応していません」(同・重村氏)

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